総合商社は無用か

2016年03月28日 14:50

連日報道されているように此の16年3月期、三井物産三菱商事が共に創立(47年・54年)以来初となる連結最終赤字(700億円・1500億円)に転落する見通しです。住友商事も今期1700億円の減損計上が見込まれており、5大商社が想定する減損の合計は約9700億円(前期6900億円)に上る見通しです。

総合商社は「日本にしかない業態」と言われます。貿易立国だけを頼みの綱に日本で英語人材が不足していた時分、当該業態には中間搾取という機能がありました。しかし我国が貿易立国から投資立国へという世界に移って行き、英語を話せる人が有力メーカーにも多く在籍するようになり、また過去の円高局面で各社夫々が現地生産に切り替えて行くといった状況下、その時代に応じて商社の役割というのは問われ続けてきたわけです。

総合商社は、80年代には「商社不要論」を唱えられ、90年代のインターネット黎明期には「中間業者不要論」をささやかれるなど、何度もさまざまな危機に直面してきた業態です――三菱商事のコーポレートサイトにも、このように書かれています。

そして中間搾取という商社の仕事が意味を為さなくなって後、彼らは資源ビジネスというリスクテイクに傾斜して行ったというわけです。先日の日経新聞の社説でも「三井物産では利益の約8割を、三菱商事でも7割弱を資源事業が占めたことがある」との一文が示している通りです。

言うまでもなく商社というのは莫大な売上高を誇り、それなりの利益を出してはいますが、利益率で見ると非常に低いものがあります。日経ValueSearchの「業績推移(業界平均値)」に拠れば、直近3期の利益率(純利益÷売上高)は2.5%(13/03)、2.5%(14/03)、1.9%(15/03)に過ぎません。そしてそうした状況の中でも更なるリスクテイキングをしなければ、ビジネスとして成立して行かないといった脆弱性が内包されているのです。

例えば、ドバイ原油と鉄鉱石の平均価格を15年3月期および16年3月期で比してみれば、1バレル=83ドルから45ドルへ、1トン=93ドルから53ドルへと大きく下落したわけですが、そういう中で「資源権益の比率が低い伊藤忠」商事の他は、経営は物凄いダメージを被り大幅に可笑しくなる所が出てきたのです。

商社に御勤めの方には怒られるかもしれませんが私自身、随分昔から総合商社は原則無用であると言ってきた一人です。商社はこれから後、嘗ての成功領域で食べて行くのは難しいでしょう。

総合商社は猛スピードで変革して行かなければ、激動の時代に取り残され彼らの働き場がどんどんと無くなって行き、時間の問題で終わりを迎えるようなってしまうかもしれません。当ブログでも常々申し上げている通り、過去の成功体験にあぐらをかくことなく、常に自己否定し自己変革を遂げ、そして自己進化し続けて行かねばならないのです。

これまで商社は、IT領域でもずっと他社の後塵を拝してきました。今後たとえばFinTechやIoTあるいは宇宙やAI等々の成長領域に入り込み、ビジネスとして中途半端な状況に陥って行かない為には、相当に若い人をヘッドに据えて行かなければならないと思います。

それは昨年「三井物産が社内序列32人を飛び越えてトップに54歳という若さの安永竜夫執行役員を起用するサプライズ人事」を断行したように、当業界を取り巻く現下の経営環境に鑑み突飛かと思われるような英断が求められるということです。

昨年6月のブログ『撤退の難しさ』の結語で、私は「之すべてトップは此の時世と社会を洞察しその変化に勇気を持って応じられねばならず、それが出来ないトップであれば国であれ企業であれ末は破滅の道を辿る」との指摘を行いました。

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