NHK「朝ドラ」は、おばあちゃんのAVである

2016年05月16日 06:00

NHK朝の連続テレビ小説(以下、朝ドラ)「とと姉ちゃん」が快調である。平均視聴率23.5%という21世紀最高記録を叩き出した、前作の「あさが来た」を超えそうな勢いである。平均視聴率13.5%という最低記録を持つ、2009年の「ウェルかめ」の頃の不調とは別人…いや別シリーズのようである。

朝ドラ復活のカギは「祖父母と孫の交流」とりわけ「おばあちゃんと孫娘の絆」を盛り込んだことだと思う。一般的な家族ドラマならば、せいぜい親子兄弟の範疇でストーリーが進むが、朝ドラ(特にヒット作)では「可愛く愛嬌があって優しく健気な孫娘」が「頑固な祖父母をの心を融かす」系のストーリーが仕込まれていることが多い。特に、「仲違いした親子が、成長して年頃になった優しい孫の尽力で、再び和解」というのが定番であり、これが今やテレビのメイン視聴者層となった高齢者の心をつかむのだろう。

ただし、これは「高齢者に都合のよいファンタジー」でもあり、NHKからお得意様へのサービスでもある。無縁社会の進行する現在の日本社会では「いったん疎遠になった親子は孫が成人しても疎遠なままで、老人はますます頑固になってゆき、金策以外の理由で孫が祖父母に近づくことは稀」なのが残念ながら現実である。

成人向けアダルトビデオ(以下、AV)の特徴も「男性に都合のよいファンタジー」である。「若く可愛い女性が、向こうからやってきて、男の欲望を全て受け入れてくれる」という「現実にはあり得ないストーリー」であり、映像中のAV男優のプレイも「男が興奮するように、大げさでアクロバティック」な行為で、現実の女性に実行したら「痛いと怒って途中で帰った」というレベルの代物である。

男性のAVに相当するのが、女性の「ハーレクインロマンス」ではないかと思う。ストーリーは水戸黄門のようにワンパターンで、「庶民的な主人公が、医者やら青年実業家やら大スターやら貴族やら石油王(なおかつイケメン)に見初められて、波乱万丈の末にゴールイン」という「現実にはあり得ないストーリー」で「女性に都合のよいファンタジー」なのだが、日本上陸後36年目の現在も盛業拡大中である。

インターネットの発達によって、写真集・動画・ゲームなどAV系コンテンツはすっかり身近なものになった。こっそり無料で視聴できるサイトは多く、タブレット端末が一台あれば、思い立った時に好きなだけ疑似恋愛できるようになった。今のAV女優は朝ドラ出演者レベルの美人も多く、現実の女性のように男をアッシー扱いしたりはしない。たいして可愛くもない女をゲットするために、それなりの金や時間をかけてメンドクサイ思いをするよりも「AV女優との疑似恋愛の方がラクで楽しい」という男性の増加は、少子化の一因だと思われる。

同様に「ハーレクインロマンス」系コンテンツも、今やネットによって好きな時に好きなだけ入手できるようになった。なまじ合コンや婚活パーティーに出かけても選ばれずにみじめな思いをするぐらいなら「イケメン大富豪との疑似恋愛の方がラクでときめく」という女性も増加しており、これまた少子化の一因であろう。

そして、高齢者は朝ドラを通じて「可愛い孫との疑似交流」を楽しむようになった。朝ドラのヒロインは現実の孫のように、夜泣きに悩まされたり、お小遣いをせびったり、断ったら「クソババア!」と罵ったり、「口くせぇ~」と顔を背けたりすることはない。なまじ、ドラマの疑似孫が可愛ければかわいいほど、現実の子どもを煩わしく鬱陶しいものに感じてしまい、「近所に保育園建設?うるさいし、いやだね!」的な反応の一因になっているような気がしてならない。

現在のところ、「祖父母・孫」関係を代償するようなネットコンテンツは少ない(しいて言えば、ペット系コンテンツ?)。しかし、インターネットは麻薬のようなものである。今後、高齢者のネット親和性は上昇する一方だろうし、「孫育てゲーム」のようなコンテンツが大ヒットするような時代がくれば、男女関係だけでなく「祖父母・孫」関係もネット内で代償されてしまい、現実の人の絆はますます希薄になってゆくのかもしれない。

(画像はNHK公式ホームページより)

 

フリーランス麻酔科医

1966年生まれ。フリーランス麻酔科医。地方の非医師家庭に生まれ、某国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、2012年から、「ドクターX~外科医・大門未知子~」「医師たちの恋愛事情」など医療ドラマの制作協力に携わる。近著の「フリーランス女医が教える 「名医」と「迷医」の見分け方」では、老人病院を含む100以上の病院を渡り歩いた実情をレポートしている。

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筒井 冨美
フリーランス麻酔科医、医学博士

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