円高株安の要因はアベノミクスへの懸念

2016年06月04日 11:57

安倍首相が消費増税の先送りを表明後、外為市場ではドル円は109円割れまで下落し、日経平均も17000円を割りこんでいた。特に2日のドル円と日経平均の下落は、日銀の佐藤審議委員が講演でマイナス金利政策に対して反対の姿勢を示したことで、日銀の追加緩和が先送りされるとの思惑によるものとの指摘があったが、それは違うのではなかろうか。

そもそも佐藤審議委員は量的・質的緩和の拡大やマイナス金利政策の決定時に反対票を投じており、黒田総裁を中心とする執行部とは距離を置いている。今後もしマイナス金利の深掘りを検討することになった際も当然、佐藤委員は反対するとみられるが、それで決定が覆されることはないはずである。それは当然、市場参加者もわかっていると思われる。それではなぜこの佐藤委員の講演内容が材料視されたかといえば、異次元緩和を中心としたアベノミクスに対しての疑念が海外投資家を中心に意識されたためと思われる。

今回の佐藤委員の講演の内容は、これまでの佐藤委員の発言等から大きな変化はないが、表現がより厳しくなっている。というよりも黒田総裁というかアベノミクスの登場以来封印されていた、かつての日銀が示していた通常の理論を前面に打ち出してきているようにも見える。つまり、今回は黒田総裁等の意向を意識してのフィルターが外されていたように私には感じられた。

消費増税の延期そのものがアベノミクスと呼ばれたリフレ政策の効果について疑問を投げかける要因となったが、佐藤委員の講演内容により、その柱であった異次元緩和が実態経済への働きかけに乏しく、むしろリスクを増加させることになることを佐藤委員の発言を通じて、あらためて市場参加者が認識したのではないかと思われる。

日銀のサイトにアップされている佐藤委員の講演内容からいくつか抜粋してみた。

「特定の期限を区切り、特定の物価上昇率を目指すという考え方については、金融政策の効果発現のラグや不確実性を考え併せると、予てから違和感を持っている。」

「(マイナス金利で)ペナルティを課しつつマネタリーベースの増加目標を維持するのは論理矛盾である。」

「長期・超長期ゾーンの大幅な金利低下は長期ゾーンまでマイナスの下で行き場を失った資金が search for yield の結果として辛うじてプラスの金利が残っているゾーンに染み出したもので、当初の政策意図であるポートフォリオ・リバランスにはむしろ逆行していると思う。」

あたりまえの発言であったが、むしろここまではっきり物が言えなかったのがこれまでの日銀であったようにも思われる。3年掛かってようやくこのような当然といえる発言が出て、市場もこの発言内容に納得した動きを示したとも言えまいか。そして佐藤委員は下記のような発言もしている。

「わずかなプラスの利回りを求め、超長期国債の購入に向かう足許の動きには2003年のいわゆる「VaRショック」前のような危うさを感じる。」

1日の東京市場は円高株安となったが、債券市場では佐藤委員の発言にほとんど反応を示していない。これは違和感がなかったためと思われる。上記の発言についても同様であったものの、債券市場参加者はこのリスクについても薄々気配を感じ取っているのではなかろうかと思われる。そして、アベノミクスのアキレス腱ともいえるものは実は日本国債にあることは言うまでもない。

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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年6月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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