議員の海外視察は報告書の提出を義務付けるべき?

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議員の海外視察は内容や効果が分かりにくいため「税金の無駄遣いではないか」と批判されることがあります。確かに、視察が物見遊山なのか、現地調査なのか、パイプづくりなのか、目的が曖昧なものが見受けられます。

昨日、東京都議会の議員団が去年10月に実施した、ラグビーW杯の視察の費用が約2000万円にのぼっていたことが明らかになりました。内訳としては、航空券代が都の職員を含む14人全員がビジネスクラスを使用して約793万円。宿泊費は、条例の規定はるかに上回る1泊8万2600円のホテルを利用したとあります。参照:産経ニュース

東京都の宿泊規定は1泊2万9000円ですが、これはイベント時であることを考えると少々厳しい金額であるようには思います。また、当初から海外視察は決められていて予算も計上されているわけですから、視察がどれだけ有意義だったかを報告すれば問題はありません。

昨年10月の視察ですから、報告書がUPされているものと思い探しましたが見つかりませんでした(既に公開されているのであればご容赦ください)。なお、報告書ではなく、東京都議会のHPで「ラグビーワールドカップ2015イングランド大会調査団の報告」として報告文が掲載されていました。約400文字程度の報告文になります。

「現地では、試合会場以外でもラグビーを楽しめるファンゾーンや8万人の観客を収容するトゥイッケナム試合会場の運営方法、バーミンガム大学のキャンプ地運営等を調査しました。レセプションでは、国際統括団体ワールドラグビーのベルナール・ラパセ会長を始め、多くの重要な国際関係者と日本大会の成功に向けて、意見交換をしました。また、海外の観客誘致効果が高いことや非常に大きな経済波及効果があることを調査しました。」(原文ママ)。私はHPの報告文しか読んでいませんが以下についても知りたいところです。

1.トゥイッケナム試合会場の運営方法
2.バーミンガム大学のキャンプ地運営等を調査した内容
3.多くの関係者との意見交換した内容
4.海外の観客誘致効果が高い理由
5.非常に大きな経済波及効果がある理由
6.視察を通じた成果及び総括

海外視察は、頻繁に監査請求を受けることから「観光旅行」と変わらないケースも散見されています。最近になり現地調査報告書の提出が義務づけられていますが、一部を除いて、内容的に問題がある報告書が少なくありません。可能であれば一般の方にも分かりやすいように内容を精査してもらえればと思います。

まず、視察の基準と目的、視察先概要(名称、事業概要、先方面会者)の記載。意見交換の内容と成果(もしくは今後期待されるであろう成果)。また視察をより深堀する必要性があります。この部分は、業界知識の有無が影響を及ぼしますから、ヒアリングやリサーチは業界の見識がある人がおこなうか、該当者が居ない場合は、専門家の対応が必要になるでしょう。現地では、相当数の訪問をすると思いますので、見やすいように統一フォーマットにして、サマリーを添付すると分かりやすいでしょう。

なお、国会議員の場合、海外視察は公務の一環になります。そのため視察の報告書を各議長に提出する義務が発生します。衆議院の場合は委員会として議員団を構成しますが、参議院の場合は与野党の各会派で特定の政策テーマに合わせて議員団を形成します。また、視察報告書は誰でも閲覧可能で複写(無料)もできます。

国会議員の海外視察は立場や職責を鑑みれば充分に理解できるのですが、地方議員の海外視察は、そのあり方を含めて再検討の余地があるように思います。

尾藤克之
コラムニスト

追伸

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