なぜトランプ氏は握手を避けるか

2016年06月25日 18:00

排外主義(Xenophobia,ゼノフォビア)が広がっている。欧州では難民・移民の殺到に直面し、それに呼応するようにゼノフォビアが拡大してきた。難民収容所への襲撃事件が絶えない。米国も例外ではない。共和党大統領候補者ドナルド・トランプ氏の発言にはゼノフォビアと批判されてもおかしくない外国人排斥傾向が感じられる。

オーストリア代表紙「プレッセ」は21日、「病原菌への吐き気、外国人への嫌悪」という興味深い見出しのワシントン発記事を掲載していた。「トランプ氏は握手を嫌う。なぜならば、バクテリア、ウイルスの感染への異常な恐怖心があるからだ」というのだ。

トランプ氏が握手を恐れるのは、握手する人がどこで、何を触ってきたか分からないうえ、その人が感染している黴菌が移る危険性を排除できなくなるからだ。このような症状を精神医学用語ではMysophobia(不潔恐怖症、潔癖症)と呼ぶ。極端な場合、強迫症障害が生じる。バクテリア恐怖でパニックに陥るケースも出てくる。

プレッセ紙は、「トランプ氏の潔癖症は強迫症障害が出てくるほどではないが、同氏のイスラム系移民の入国禁止発言は単なる現政権の移民政策への批判といった政治的理由からだけではないだろう。異国人から病原菌が感染するのではないかといった不安、恐怖感が発言の根底に潜んでいるのではないか」と示唆している。

トランプ氏はその著者の中で「自分はかなりの潔癖症だ」と述べているという。トランプ氏は見知らない人との握手を嫌い、エレベーターのボタンを押すのも躊躇するというから、かなりの潔癖症だ。

ヒラリー氏と大統領ポストを争う人物が病原菌恐怖症、それに関連した外国人排斥傾向がみられるとすれば、一個人の問題で済まされなくなる。例えば、安倍首相が訪米し、トランプ新大統領と握手しようと手を差し伸べた。新大統領は顔をしかめそれを避けたとすれば、日米関係にもヒビが入るかもしれないからだ。

もちろん、病原菌を恐れる人はトランプ氏だけではない。インフルエンザの季節になると、医者は「外から帰ってきたら、うがいし、必ず手を洗うように」と助言する。外の接触で黴菌に感染する危険性は空論ではなく、現実的だ。

だから、頻繁に手を洗う、出来れば外との接触を防ぐ、といった程度の予防策なら問題は少ないかもしれない。しかし、その予防策がさらに進み、自分とは違う人間、民族、宗教を信じる人への不信感、恐怖心が生まれてくれば、大きな問題だ。ましてその人が大統領候補者となれば、世界的な懸念となる。プレッセ紙のポイントはそこにあるのだろう。

ちなみに、「排他主義、外国人排斥主義と潔癖症との相関関係」を研究した学者の報告書が公表されているが、両者には密接な関係があることが明らかになっているという。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年6月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。写真はWikipediaより。

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