【映画評】planetarian 星の人

2016年09月09日 06:00

世界大戦後、細菌兵器の影響で荒廃し、見捨てられた危険な街“封印都市”。その街のデパート屋上のプラネタリウムに、“ほしのゆめみ”という名前のロボットの少女がいた。彼女はプラネタリウムの解説員で、1年間にわずか7日間しか稼働することができない壊れかけのロボットだった。彼女はそこで、いつか誰かが訪れることを信じて、誰もいないこの世界で誰かが来るのを待ち続けていたのだ。30年後、現れたのは、貴重物資を回収する青年“屑屋”。「おめでとうございます!あなたはちょうど、250万人目のお客様です!」。突如現れた少女型ロボットに警戒する屑屋だったが…。

ゲームブランドのkeyによる配信版アニメ「planetarian ちいさなほしのゆめ」の劇場版「planetarian 星の人」。戦争の影響で荒廃した世界を背景に、廃墟となったプラネタリウムに取り残された少女型コンパニオンロボットと、偶然彼女と出会った青年が織りなす交流を描く物語だ。かつて“屑屋”と名乗っていた男は“星屋”と名前を変えて、遠い昔に知り合った少女型ロボット・ゆめみと封印都市の記憶を思い出していく。何の予備知識もなく見たのだが、それが逆に良かったようで、配信版アニメで描かれた部分がほぼ組み込まれている構造になっているようだ。そのため、配信版未見のファンもすんなり物語を理解できるだろう。

ゆめみはロボットなので語る言葉もすべてプログラムに忠実なだけなのだが「プラネタリウムはいかがでしょう。 どんな時も決して消えることのない、美しい無窮のきらめき…。満天の星々がみなさまをお待ちしています」という言葉があまりに悲しく虚しく響くのは、現実の世界が、地上に住むことさえできないほど荒廃し、星も見えない世界だからだ。星屋が語る星の美しさ、素晴らしさは、かつて人間が暮らした幸福な記憶に他ならない。

プラネタリウムのシーンは大きなスクリーンで見るにふさわしい美しさで魅了されたが、少し残念なのは、せりふが過剰に多いこと。作画に力があるのだから、ビジュアルで語る手法でも良かったのでは? ゆめみと星屋の関係は、予想に反してビターな味わいを感じさせる切ないものだ。それでも、ロボット・ゆめみの思いは星屋へ。そして星屋の願いは、子どもたちへと受け継がれている。公開規模は決して大きくはない小品だが、静かに涙腺を刺激するアニメーション作品だった。
【60点】
(原題「planetarian~星の人」)
(日本/津田尚克監督/(声)すずきけいこ、小野大輔、櫛田泰道、他)
(切なさ度:★★★★☆)


編集部より:この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年9月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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