訪日外国人観光客数が「年に一〇〇万人足らず」だった40年程前、松下幸之助さんは「日本にある無限の資源とは」と題した記事の中で、21世紀には「日本に年に一〇〇〇万人の観光客に来てもらうことは、私はやり方次第で可能だと思います。(中略)二十一世紀の日本はそのようないわば“観光立国”をしていくのだという国家的な目標をはっきりもつことですね」と述べておられたようです。
しかしながら松下さんの思い虚しく、その後も訪日客数は伸び悩み21世紀に入り10年を経ても尚、中々1000万人には届かぬ状況が続いてきました。そうした中、5年9ヶ月前に上梓した拙著『日本人の底力』(PHP研究所)で私は、観光産業振興施策として政府は、①観光ビザの取得を容易にする、②出入国者数の大幅増加に備え入管や税関の体制整備をする、③様々な言語の通訳を養成する、④一定のグローバル・スタンダードに準拠した公的な宿泊施設を整備する、等々を早々やるべきだと書きました。
あるいは、地方自治体としても観光客の地方経済に対するインパクトを十分認識し、地方の観光資源の開発(例えばスキー施設)や温泉開発、地域の食材を使った料理の工夫等々、地域住民挙げて行うべきだと書いたわけですが、此の間安倍晋三首相や菅義偉官房長官が当該分野における針路を示し様々な規制を打ち破って行く中で、上記のような各チャネルでの改善努力の継続が見られました。
結果、一昨年に比して伸び率(前年比47.1%増)は劣るものの、昨年「日本を訪れた外国人旅行者数は推計で前年比22%増の2403万9000人だった」ということで、此の5年で見ると一貫して増加基調を辿り為替要因も相俟って一気に約4倍の規模にまで拡大しました。オリンピックイヤーの「2020年に4000万人」という政府目標の達成に向け、そしてまた、15年7~9月期をピークに頭打ちとなっている訪日外国人旅行消費額の増加に向け、引き続き政府・地方自治体を中心にオールジャパンで知恵を絞って行かねばならないと思う次第です。
それから最後にもう一つ、これだけ四季に恵まれ折々の旬の食材があり風光明媚な日本を観光立国して行くのに併せて、やはり国際都市になるべく非常に大事な要素として我国に永住者を増やして行くことも積極推進して行かねばなりません。日本という国には1000人当たり8人程度しか「永住外国人」がおらず(2015年末時点)、何時まで経っても先進諸国では考えられないほど極めて少ない状況に何ら変化が見られません。
経済成長率の基盤というのは、人口増加率と生産性上昇率です。人口減少時代を迎えている日本は、その意味においても今日より格段にフレキシブルな移民政策を認め行く方向にならざるを得ないと思います。勿論、世界的に今移民というものに大変センシティブですから、之は随分難しい取り組みではありましょう。しかし私は予てより主張し続けている通り、やはり我が国も少なくとも他の先進国並みに選択的に移民政策を図るべきで、長期に亘り日本で生活して貰うことには大きな意義ありと考えています。
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