トランプの政策は“社会実験”として考える視点

2017年02月10日 06:00

切り札か、ババ抜きのババか

「トランプ米大統領が誕生」と聞いて、「まあ珍しい。あのトランプのトランプさん?」と、思った日本人は少なくないでしょう。実は、日本語と英語とでは、トランプ(Trump)の意味が異なります。日本語のトランプは、ゲームで使う「トランプ」であるのに対し、英語のトランプの意味は「切り札」です。日本語の「トランプ」を英語でいう時は「card(使う際はcards)」です。

「トランプ大統領はへえー、切り札なんだ。それにしても、国内、海外からやること、なすこと、しゃべることに批判が高まり、集中砲火を浴びている」。「そうでもない。英語のトランプの意味はジョーカーに相当すると思えばいい」。友人との間でこんな会話があり、辞書や用語解説で「ジョーカー」の意味を確認してみました。

「最高位の切り札。ババとも呼ばれる。有益なカードにもなり得るし、有害なカードにもなり得る」。「トランプに含まれる特別なカード。道化師などの絵がついた番外の札」。ざっとこんな具合です。米大統領は世界最強の政治家ですから、確かに最高位の切り札です。と同時に「有害なカードにもなり得る」とは、なんとも皮肉な話です。さらに「番外の札」とは。選挙選序盤では、泡沫候補扱いされ、確かに「番外」でした。

ついでに、トランプ氏は、祖父母がドイツ出身でドイツ系です。ドイツ語でトランプは「trumpf」と書き、トランプ氏の「trump」と少し違います。意味は英語と同じく「切り札」です。それにしても面白い名前です。

奇想天外かつ大胆不敵

大統領に就任して矢継ぎ早やに、イスラム圏7か国からの入国禁止令、メキシコ国境に巨大な壁の建設、日中独の為替安への批判、国際組織・機関に対する軽視発言と、恐れるものなし、という威勢の激しさです。「七並べ」でジョーカーを使って完成したら上がりで勝ち。ババ抜きゲームのように、最後にババをつかんだら、負け。さてどうなるのでしょうか。

個別のテーマごとの問題点、それに対する批判に関心が集中しています。そこで少し距離をおいて、トランプ現象を見つめると、違った視点が浮かび上がってこないでしょうか。かつて大手商社、今は国際的に活動するNGOの幹部を務めている友人が、「トランプ大統領が次々に打ち出す政策を社会的実験と考えてみたらどうだろう」というのです。「実験が成功するのかしないのか、興味深々だね」といいます。

奇想天外な実験、誤解に満ちた実験、間違った実験など、政治、経済、社会、国際関係などにまたがり、これだけ多くの改革、政策項目を一挙に並べたててくれることは滅多にありません。化学や物理、生物では実験ができても、社会を相手にした実験はなかなかできません。実験台に乗せられた米国民、相手国、直接の利害関係者は怒るでしょう。そこは目をつむることにしましょう。

淀んできた世界秩序

「トランプ氏の革命」という表現も聞かれます。「トランプ氏自身の素顔、米国の裸の姿を見せてくれている」との皮肉っぽい論評も聞かれます。とにかく政治、経済、社会学者は豊富な研究材料を簡単に手にすることができました。「トランプ氏のどこが間違いで、どこが正しかったか」、「識者やメディアの論評のどこが間違いで、どこが正しかったか」を検証する絶好の機会がやってきました。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年2月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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