FRBのイエレン議長は14日、米上院銀行委員会で証言し、「追加利上げの条件は、雇用と物価が想定通りに改善するかどうかだが、今後数回の会合で判断するつもりだ」と主張した。緩和措置の解除を待ち過ぎることは賢明ではないとも指摘。利上げするに当たってトランプ政権による財政刺激策の計画を待つ必要はないと指摘した。
FOMCの今後のスケジュールは下記の通り。
3月14、15日(イエレン議長の会見有り)、5月2、3日(議長会見なし)
6月13、14日(イエレン議長の会見有り)、7月25、26日(議長会見なし)
9月19、20日(イエレン議長の会見有り)、10月31日、11月1日(議長会見なし)
12月12、13日(イエレン議長の会見有り)
FRBは毎年3、6、9、12月にFOMCメンバーによる米国経済と政策金利の見通しを公表しており、政策金利の見通しは「ドット・チャート」と呼ばれている。これは今後の政策金利の予定を示すものではなく、あくまでFOMCメンバーの予想の集合体にすぎない。実際に2016年の利上げは年4回とドット・チャートで予想されていたが、現実には12月の1回だけであった。
2017年のドット・チャートでの予想は年3回となっているが、これでFRBが3回利上げをしてくる予定だということではない。現実の利上げはかなり慎重に行ってくることが予想され、市場を取り巻く環境など次第の面がある。昨年は年末まで利上げを見送ったのは、年初からの新興国経済減速などによるリスクオフの動きや、英国のEU離脱などが影響していた。
今年に関していえば、いまのところ利上げを躊躇させるようなリスク要因が表面化しているわけではない。トランプ政権の経済政策の行方が不透明材料ながら、これは景気や物価にはプラスに作用する可能性もあり、むしろFRBにとっては利上げを急ぐ要因ともなりかねない。また、15日に発表された1月の米消費者物価指数は前月比で0.6%もの上昇となった。市場予想を上回り、2013年2月以来最大の伸び。1月の総合は前年比では2.5%上昇、コアCPIは前年比2.3%の上昇となっている。FRBの物価目標はCPIではないものの、物価が予想以上にしっかりしているとなれば、早期の利上げという可能性も排除はできない。
しかし、それでも慎重姿勢に変わりはないとみられる。このため、多くても年2回程度の利上げを想定している可能性があるのではなかろうか。3月のFOMCでの利上げの可能性は排除していないようだが、市場の予想は3月よりも6月となっているようである。6月に追加利上げを行って様子を見た上で12月に再利上げの判断をするのではないかと、今回のイエレン議長の発言からは予想される。
それでも今後、何が起きるのか予想することは難しい。オランダを皮切りにフランスやドイツの選挙次第では、ユーロというシステム崩壊の危機が訪れる可能性もある。ギリシャも引き続きリスク要因となる。中国やロシアの動きなども気になるところ。物価をみる上では原油価格の動向も注意する必要があろう。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年2月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。