「安倍首相が極右」という無知な人にルペンが極右の理由を教えよう

2017年05月10日 06:00

首相官邸サイト、Wikipediaより(編集部)

日本の保守派では、ルペンの主張はそれほど極端なものでないのにどうして極右と言われるのかと疑問を持つ人が多い。一方、そのような発言の揚げ足を取って、「世界でルペンは極右だと認められているし、安倍首相も極右なのだ」という飛躍した珍説をはく人もいる。

ルペンについては、ひとことでいえば、「ルペンはフランスの政治を論じる場合には歴史的な定義に従って極右」ということだ。

それは、フランス革命以来の共和主義の伝統から少しはずれることがあるからだ。極右とか極左というのはそういう大革命理念とはずれるものをいうのであって、他の国と違うニュアンスが加わる。

だから、日本でルペンとよく似た主張をしたらただちに極右であるわけではない。移民を受け入れないというのは日本が伝統的にとってきた政策だから反体制はない。

それでは、日本での極右とか極左は何かと言えば、たとえば天皇制に反対したら極左とか、日本国憲法を無効というのが極右だろう。それは、現在の体制がとっている制度に根本的に反対しているからだ。だから、将来は天皇制の可否も検討課題にすべきだとか、日本国憲法は押しつけという面もあるから改正すべきだというくらいでは極左とか極右にはならない。

そして、ヨーロッパではEU脱退とかユーロ離脱とかいうと、極右とか極左とかいうことになると思う。イギリスではEU離脱をいっても極右とはいわれないだろうが、それは、ユーロにも入っていないし、離脱した場合に予想される混乱が格段に違うからだ。

その意味では、今後、ルペンがEUやユーロからの離脱を将来の検討課題というくりあに引っ込めたら、そのときは、極右と呼ぶのが本当に適切かどうかということが議論になるだろう。

そういう意味で、やはりルペンは、フランス政治を論じる場合には極右なのだ。
政治用語にはそれぞれの国で独特のニュアンスがあるとしても、やはり普遍的な使い方はある。たとえば、極左をリベラルなどと名乗るのはいくらなんでも酷すぎる。

あるいは、安倍首相を極右だというデマゴーグがいるが、TPPと日米安保のどちらかに賛成なら極右ではあり得ない。共通市場や軍事同盟は極右が何よりも嫌うものだ。極右であるためには、TPP反対かつ日米同盟反対であることが最低条件だ。自民党の一部やほかの保守政治家でもそういう人がいるが、中には極右といえる場合があるかもしれない。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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