長いGWが終わった。いまの時期は「5月病」に注意しなければいけない。一般的に「5月病」は新入社員が新しい環境に適応できなかった際に発症するストレス症状と言われている。しかし、最近ではその対象が拡大しており新入社員に留まらない。
厚労省が発行する「平成26年患者調査」によれば、うつ病などの気分障害で、医療機関を受診している総患者数は111万6000人となり、調査をはじめた平成8年以降で過去最多を記録した。調査には「5月病」の項目はないものの、もはや無視することができない。
労基法は強行法規だから何よりも優先される
いま、注目されている書籍がある。『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』(あさ出版)だ。Twitterで30万リツイートを獲得し、NHK、毎日新聞、産経新聞、ハフィントンポストでも紹介された過労死マンガの書籍版である。
著者は、汐街コナ氏。デザイナー時代に過労自殺しかけた経験を描いた漫画が話題になり書籍化にいたった。監修・執筆は、精神科医・ゆうきゆう氏。自分の人生を大切にするための考え方が、わかりやすくまとめられている。
――まず、労基法は強行法規である。強行法規の意味を間違えている人がたまに散見するが、労基法は特別法であり、法律の趣旨は「労働者の保護」にあたる。第13条にて「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は無効」と宣言している。無効と宣言している以上、強行法規であることが明白である。
ブラック企業は「辞められない」と思っている人が多いが「職業選択の自由」は法律で定められた権利である。会社側に「辞めさせない権利」などは存在しない。もし、辞めにくい内容が含まれていたら法律に違反していることになる(例:「退職するには上長に報告し許可を得なければいけない」「引継ぎが終わらなければ退職できない」など)。
「会社を辞める際の理想は『立つ鳥跡をにごさず』ですが、跡をにごさないようにしていると、ドンドン仕事を振られて辞められなくなることがあります。この場合、『立つ鳥跡をにごしてもいい!』と開き直りましょう。跡のことばかり気にして立ち去れなかったら意味がありません。」(汐街コナ氏)
「辞める会社がどうなろうと知ったこっちゃない!これくらいの気持ちでいたほうが柔軟に対応できるはずです。」(同)
――とは言っても、お世話になった先輩や同僚もいるし、自分が抜けた際の皆の負担が気になると思っている優しい人も少なくない。
「そこはもう『命てんでんこ』の精神でいくしかありません。地震や火事などに見舞われたら周囲の人間より自分の安全を確保するほうが大切です。決して他人を見捨てるのではなく、各自がまず自分を大切にすることで、結果的に全員生き延びるということです。我慢することで共倒れは避けなければいけません。」(汐街コナ氏)
「普通に働くだけで命に関わる大災害レベルの覚悟が必要なのかと疑問に思おう人がいるかも知れません。ですが、ブラック企業の過労死の問題はかなりヤバイ状況まできていると思います。」(同)
「好きなら頑張れ」という圧迫的な疑念
――「好きなら頑張れ」と言う人がいる。「24時間仕事のことだけを考えろ」と言う人がいる。経営者や取締役であれば職責を全うしなければいけないからそれで良いのだろう。しかし、一般社員にそれを強要することはできない。
私はバブル世代だから、このような風潮に近かった。「24時間戦えますか」とCMが流れ、熱があっても、38度を超さなければ医者に行くことが許されなかった。38度を超していても、解熱剤とドリンク剤を飲みながら仕事をすることも多かった。
「私の当時の肩書きはデザイナーでした。好きなことをしているのだから、休まないのは当然、睡眠不足はあたり前と考えている人が少なからずいました。ですが、その仕事の先に夢や希望はあるのでしょうか。ちょっと注意してみてください。どこまで頑張ればいいのか、どこまでが『甘え』で、どこから『頑張りすぎ』なのか。」(汐街コナ氏)
汐街コナ氏の生々しい体験を、精神科医・ゆうきゆう氏が解説する内容にはリアリティがある。現代社会で働く、仕事に追われるすべての人におすすめしたい。
参考書籍
『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』(あさ出版)
尾藤克之
コラムニスト
<アゴラ研究所からお知らせ>
―2017年5月6日に開講しました―
第2回アゴラ出版道場は、5月6日(土)に開講しました(隔週土曜、全4回講義)。
「次回の出版道場に、1年前にトランプ勝利を予言した、渡瀬裕哉氏が登壇」。