経営のフィロソフィーが活きるトマトの話

2017年06月11日 06:00

写真は青山氏(ひむか遊パークうみウララHPより)

最近、ちまたで“ナポリたん”があついそうだ。“ナポリタン”ではない“ナポリたん”である。これは、“ナポリタン”の魅力を伝えることを目的に、カゴメが展開した美少女キャラクター商品である。グッズや歌が話題になっているそうだ。先日、“ナポリたん”なるものが存在することをはじめて知った(参照:詳しくはカゴメHP)。

カゴメはユニークな会社だ。広報力や技術力、さらに商品開発力には定評がある。世界に8000種類あるといわれるトマトの種のうち、7500種類がカゴメの研究施設には保管されているといわれている。新しい品種改良に取り組んでおり、高リコピン、ラウンドレッド、サラダプラムなど、他にはないラインナップを有している。

フィロソフィーが活きる商品

カゴメの強さの源泉とはなんだろうか。今回は、カゴメの食品開発に従事した経験をもつ、青山志穂(以下、青山氏)に、「外からみたカゴメの強さ」について聞いた。青山氏は、現在、日本ソルトコーディネーター協会(代表理事)を運営しており、「塩の専門家」としても活動をしている。

――カゴメは、飲料、食品、調味料の大手総合メーカーである。創業者の蟹江一太郎が1899年にトマトの栽培を開始する。その後、1903年に国産トマトソースの製造に成功し、現在で、トマト加工事業では国内最大手として知られている。株主を大事にする企業であり、同社では個人株主のことを「ファン株主」と称している。

「カゴメの強さは『種から製造販売までを一貫して行っている』という点にあります。原料をセレクトして仕入れて製造、販売するメーカーは多数ありますが、自社で種から保有し、研究を重ね、栽培するところからやっているメーカーはほとんどないからです。『トマトと野菜に真面目であること』。これがカゴメの良さです。」(青山氏)

「もう1つの大きな強みは、『日本の農業について真剣に考えている会社』であることです。海外の原料に頼るのではなく、国内生産者の継続的発展を支えると言う意味でも、国内に多数の契約農家を持っています。」(同)

――契約農家を持ち指導することは企業にとっては大きなコストになる。しかし、契約農家にとっては安定的に収益を確保できるので安心できるメリットがある。

「東日本大震災の際にも契約農家のトマトは全量買い上げ、生産者を支援しています。このような意思決定に社員は誇りを持っています。時々、『自分のところの製品は家族に食べさせない』というメーカーさんもありますが、カゴメの社員は自信を持って人に勧めたり家族に食べさせたりします。それは、『嘘のない、身体にいいものを作っている』という事実に基づいた自負が、行き渡っているからでしょう。」(青山氏)

カゴメの弱点とはなにか

「一方で、他社と激しく争い、その結果、激しい競争を勝ち抜く力と言う意味では、少し弱いのかもしれません。よいものを作って、人を喜ばせて、そうして支持をしていただくというのが、会社の考え方なので、あまりガツガツとライバルメーカーを蹴落として、というようなことは考えていないように思います。」(青山氏)

――このような話を聞くと、カゴメは安定志向の会社に思われるかもしれない。しかしトップの推進力はかなり強い。業界に先駆けてメーカー直取引を決めたり、「無添加」の商品ラベル貼りも、同社がはじめたものである。

今回は、日本ソルトコーディネーター協会の青山志穂氏に話をうかがった。この場をかりて御礼申し上げたい。なお、青山氏の近著も紹介するので参照いただきたい。

参考書籍
日本と世界の塩の図鑑』(あさ出版)

尾藤克之
コラムニスト

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