希望の党は大敗北に終わるだろう

上村 吉弘

街頭で支持を訴える小池代表(希望の党ツイッターより:編集部)

つい数日前、世論調査で「首相に相応しい人物」として小池百合子・東京都知事が安倍首相を抑えてトップに立ったとマスコミが報じていた。また、比例投票先で希望の党は自民党に次ぐ15%以上だとか、議席数は150を上回る勢いだとか、メディアはとにかく希望の党一色のような報じ方をしていた。

一方で、ネット動画やSNS、掲示板では、こうしたマスコミが伝える小池百合子の国政待望論とは真反対に、小池氏や希望の場当たり的で権力志向に偏った言動に対する誹謗中傷が溢れている。「同じテーマで語られている出来事なのか?」と違和感を覚えた人も多いのではないだろうか。私もまた、その落差がどこから生じるのか不可解でしかなかった。

公示後に、化けの皮が剥がれるように希望への失望を伝えるニュースが横溢し、ようやくオールドメディアの『誤報』が修正され始めた。新聞やテレビ中心のオールドメディアは、安倍首相が安全保障体制や改憲に着手し始めてから、なりふり構わぬ政権批判を開始し、政治的に露骨な偏りを示している。このために、同じ保守政治であっても「安倍政権を倒してくれるなら」と小池・希望寄りの報道が目立ち、彼らがその根拠に利用する世論調査を軸にして小池氏の人気ぶりを煽った。彼らが常とう手段にする世論調査では、それぞれの政治的立場を露骨に反映した質問内容で答えをミスリードし、自分たちが望む世論を演出する。

ところが今回、革新勢力すらも味方に付けていたはずの小池・希望護送船団は、公示をきっかけにあっけなく瓦解した。

なぜか。独裁者である小池氏が結局、国政復帰せず、希望の党が選挙後に誰をリーダーにしてどんな政治を目指すのかがまるで見えてこないため、「よいしょ」のしようがないほど、空っぽな政党であることが明白になったからだ。とってつけたような「12のゼロ」なる政権公約も、満員電車ゼロや電柱ゼロなど、都政でも全く着手できていないテーマを重複させている。小池氏が主張するベーシックインカム導入に関して言えば、年間予算をも使い切るような財源の根拠も明確になっていない。彼女が多用する横文字の一つ「ワイズスペンディングで予算を削り云々」などという、具体性も実現性もない言葉でお茶を濁し、「それ言いたいだけだろ」とツッコミを入れたくなるいい加減さで日本の未来を語る。

さすがに、オールドメディアもこれほど中身の空っぽな小池氏や希望の党に対して呆れ始めたのが一つ。さらには、民進党の一部を「排除する」と彼女が明言した結果、革新系の支持者たちが反発し、支持の矛先が立憲民主党に大きく流れたことが、希望の党失墜の大きな要因となった。排除される人々が窮余の策で結党した結果、「魂を売らずに信念を貫いた」と想定外の賞賛を受けて立憲民主党は勢いを増し、逆に民進党からの華麗なるイメチェンを果たしたはずだった希望の党は、政治的な信念のないガラクタの集まりというレッテルを張られる結果となった。オセロの白と黒が再び逆転したわけである。

はっきりさせておかなければならないことは、民進党から飛び出した連中は、希望の党であれ立憲民主党であれ、ガラクタである。ただ、オールドメディアのレッテル張りで善悪のイメージが日々逆転しているだけのことだ。

さて、政界を掻き乱している小池氏だが、都政でも「しがらみのない政治」とか何とか言ってトップに立ったものの、こちらも解決済みだった築地の豊洲移転を蒸し返し、悪者づくりに利用した挙句、未だに豊洲市場は開場されずに毎日、都は600万円の損失を続けている。このために周辺道路の改修も遅れ、小池氏が公約していた満員電車解消や無電柱化などには大きな進展がない。

彼女は政局になると、悪者をつくってそれを「退治」し、自らを英雄に見せようとする。そのイメージ戦略で昨年の都知事選から都議選まで連勝を重ねてきた。政局での成功はしかし、都政という政策では真逆の停滞をもたらし、その本性が剥き出されつつある。政局ありきで政策を蔑ろにする姿勢は、音喜多駿・上田令子の両都議の離反をもたらし、希望の党の人気退潮はガラクタ元議員たちの不信感も買い始め、総選挙後の党瓦解が見え始めている。

焦る小池氏は懸命に新たな悪者づくりを再開し、モリカケ問題で安倍政権への攻撃をしているが、こうなってくると、保守・革新巻き込んだ公示前の勢いが、保守・革新巻き込んだ小池批判となり、総選挙後は誰も彼女の周りにいなくなるだろう。政局を掻き回して周囲に気遣いせず己の欲望に突っ走る政治手法は、彼女のかつての恩師である小沢一郎にそっくりで、彼もまた側近が次から次に離反し、政治権力を急速に失墜させていった。小池氏は女版の小沢一郎なのである。

希望の党はおそらく50議席も取れない結果に終わるだろう。そうなれば、小池氏の責任問題に直結し、人々は彼女から急速に距離を置き始めるに違いない。政治は結局、その時々の風や勢いだけで突っ走ると、失速したときに自らを支える軸がないので、新たな風や勢いに吹き飛ばされて終わる。安倍晋三氏が、一度は権力を失墜しながら復活できたのは、勢いを失った彼を支える人々が側から離れず、再起のチャンスを皆でお膳立てしたからだ。

それでも世論調査では、比例での投票先に希望の党を入れるという人が根強くあるが、そうした人々の多くが、おそらくは無党派層であり、政治的関心の薄い人々だろう。他党に入れるという人に対して、希望に入れるという人は話題に飛びつきやすい「なんとなく層」が多く、彼らの多くは、投票日が晴れていれば遊びに行き、雨が降れば外出を控えるだけのことである。

私には小池氏の現在が、ケンシロウに秘孔を突かれたモブキャラに重なる。彼女の政治生命が「お前はもう死んでいる」ようにしか見えない。

上村 吉弘(うえむら  よしひろ)フリーライター
1972年生まれ。読売新聞記者、国会議員公設秘書の経験を活かし、永田町の実態を伝えるとともに、政治への関心を高める活動を行っている。