我慢の限界!公約違反の政治家を“債務不履行”で訴えられるか? --- 吉岡 慶太

アゴラ

あるサイトの調査で、有権者の93.4%は「公約」を信用していないというアンケート結果があります

有権者の93.4%は「公約」を信用していない(しらべぇ)

これが本当であれば9割以上の人が政党公約を信用していない状態で、投票を有権者にお願いする事となります。これでは、いかに「投票しよう」「政治に関心を持とう」と訴えても、投票に行く気持ちにならない人がいたとしても責められません。

上記のアンケート結果は極端な例としても、政治不信の理由の一つに政治家の公約違反がある事は明白の事実です。何故、公約違反を行う政治家が後を絶たないのか?理由は、政治家自身の問題もありますが、それが許されるしまう選挙と社会の仕組みに問題があるとも言えます。

例えば今年の衆院選での希望の党が行った「排除の論理」の事例をあげます。小池代表(当時)は「安全保障政策」で一致しなければ排除する(公認しない)という選別をしました。憲法改正でも9条を含め改憲論議を進めるという公約を打ち出しました。本来、希望の党から公認を受け当選した議員は、安保政策と改憲議論に賛成であるはずです。政策に同意する「協定書」にサインまでする踏む絵手順を行っています。

しかし、選挙終了後、平然と「「安保法制=違憲」「9条改正を許すな」と見解を示し始める希望の党議員(元民進党がほとんど)が続出。少なくとも、今回の選挙で「希望の党」に投票した有権者は、小池代表が排除をしてまで改憲、現実的な安全保障政策を支持した人が多く含まれていたはず。つまり、選挙前の公約を平気で破って知らぬ顔の国会議員が多数でていることは、「政策詐欺」に近いと言わざるを得ません。

裏切られ続ける有権者は選挙のたびに政治に期待しなくなる

公約違反を行う政治家は今に始まった事ではない。対策を考えてみました。

1.選挙が終われば有権者に権利無しのひどい制度が政治をダメにする

まず、国会法などで公約違反の議員にペナルティを与える事ができないのかについて考えました。しかし、答えは法律では処罰されません。憲法51条により国会議員に不逮捕特権を与え、43条で国会議員について国民を代表するとしていますが、リコール制を認めていません。

国会法、公職選挙法でも議員の公約違反に対する処罰を規定していません。つまり法律では何もできないのです。

2.契約書が無いから訴訟は不可能か?

それでは民法はどうでしょうか?民法415条では、契約により債務を履行しなかった人(債務者)に対しては、履行を請求したり、不履行によって生じた損害賠償を請求できます。この考えに基づき、政治家を「債務者」、有権者を「債権者」とし、その債務(公約)の本旨に従った履行をしないときは、債権者(有権者)はこれによって生じた損害の賠償を請求し、政治家に対して債務不履行訴訟を訴えられるでしょうか?

たとえば、有権者が、自身の生活・仕事に有益な公約を実現して欲しいと考え、交通費を消費し、有給を使い、その公約実現に関係する書籍を買って勉強した上で、投票という法律行為を行ったとします。しかし、約束は守られず(政治家の公約破棄)、交通費などの経費の他、公約実現により得られると想定できた利益について賠償を求められるのか?現実的かどうかの問題もありますが、こうした訴訟を行ったとしても、選挙行為を契約とみなして損害賠償責任がでる可能性は低いと思われます。というのも損害を結びつける上での立証が難しいからです。

3.元議員ばかりの第三者委員に期待は無理?職務にも限界が有る選挙管理委員

法律で処罰ができないのであれば、第三者によるチェックができないでしょうか。選挙管理委員と呼ばれる人たちがいます。公正な選挙を行うため、執行機関から独立して置かれます。国としては総務省に設置される中央選挙管理会と、地方議会では各自治体に置かれます。しかし、仕事は選挙の執行、選挙人名簿の調整、選挙の啓発など選挙事務に関すること。さらに、選挙管理委員は特に地方議会では元議員(東京で言えば元都議と市区議のOB)天下り先になっていると言われることが多く、実質、委員に選挙改革を期待することはほぼ無理です。

制度・法律でペナルティが無理なら、有権者ファースト・民間主導で公約違反の無能議員を排除すべし

そもそも法律・制度・ルールは政治家が作るもの。公約実現が9割以上の有権者から信用されない国会議員に任せていては問題解決が困難と考えるべきでしょうか。私なりに解決策を考えました。

1.こういう「まとめサイト」なら運営して欲しいもの。社会的価値があればスポンサーは付くはず

法律では規制ができないのですから、ペナルティは選挙で落選してもらうしかありません。国家議員の場合、あきらなか公約違反の言動をした場合、記録として「公約違反まとめサイト」を第三者機関が作成し公開することで有権者が選挙時に活用できます。

「まとめサイト」では、政治家名前、過去の選挙データ、公認政党の公約と当選後の議員言動の矛盾と違反内容、年月日、発言と議会の投票態度による公約違反の数と内容を判りやすく一覧に。公約違反の数に応じて、イエローカード、レッドカード、違反活動殿堂入りといったランクを付ける事が判りやすいですね。

過去の選挙データは「選挙ドットコム」が有料で契約・公開しています。選挙公約実行と違反など、各政治家の詳細データを管理、まとめすることで利益が上げられるかが問題となります。選挙データだけでなく、政策記録、政治資料、各政党が他政党批判する戦略活用を考えた時の基礎資料として活用も考えられるため、ビジネスニーズに入る可能性もゼロとは言えません。もし本当に当方のアイデアが実現できたら、間違いなく有益なサイトになると断言します。

2. AI政治家をAI選挙分析で選ぶ時代がすぐに来るか

この解決策は遠くない将来に世界的に実現すると予言します。AI分析による政治家の思考パターン仕分けによる解決です。つまり、選挙時の口先だけの演説など聞かなくてよくなります。機械的にAIは冷静、かつ的確に政治家の考え、思考パターン、行動予測をできるはずです。

その議員の過去の議会における発言、行動、議会質問、マスコミへの対応、各種アンケート回答、その他あらゆる行動とデータをすべてAIにより分析。公約を守って実行ができる政治家なのか、調査能力ゼロで世間の風だけ見て何も考えずに当選だけ求める人なのか。解析データにより、仕事を任せられる議員かどうか、将来はわかるようになるはずです。

ただし、AI解析はまだ、始まったばかりの分野であり、やり方によっては差別となり得るリスクも考えて、あくまでも参考程度から導入は検討して欲しい。これはサイエンスフィクション的な解決策です(以前NHKの番組で、韓国でAI政治家を誕生させる試みが紹介されていたそうです)。

3. 公約実現の工程表があれば一目瞭然で便利。そのままプレゼンできます

国会議員より地方議員向けですが良い方法があります。「選挙公報」のマニュフェストを選挙終了後も閲覧できるようにする仕組みです。さらに4年間、公約マニュフェストの実行過程表を各区議会事務局がサイトにより公表し、実行度を見える化します。

基本、地方議会選挙では新聞による「選挙公報」がポスティングや郵送、新聞折り込みで各世帯に配布されます(一部の自治体では配布無)。しかし、選挙時だけの紙資料で、サイトによる閲覧ができない自治体も多く、選挙が終われば選挙公報閲覧ができなくなる自治体がほとんど。これでは、選挙時のスローガンで終わってしまいます。

各議会サイトで毎選挙時の選挙公報は議員が引退(落選)するまでは、過去のものを合わせて掲示を公職選挙法で義務付ける。さらに、公約の具体的進行度を3か月に一回、各地方議員が自身の言葉で具体的な実績と活動内容を有権者に報告する事も併せて義務付ける。本会議での質問、各委員会での質疑、行政機関への提案、意見書の態度などにより議員活動について公約実現に向けた取り組みを見える化。この改革が実現すれば、4年間の議員の仕事が全て見える化し、選挙前だけの迷惑で煩い駅前演説だけで誰に投票すべきか迷わなくて済みます。

現状でホットな政策議論として「教育無償化」があります。政府が具体化に向けて取り組みを加速していますが、党内議論がまとまっていないといった声も聞かれます。「幼児教育」なのか、「大学無償化」まで行うのか。一つの政策公約を実行すれば、そこに必ず財源と人員確保の問題が生じます。

しかし、大事なのは公約という有権者との約束に真摯に向かい合い、困難な議論を重ねても、あきらめず取り組む議員の姿勢ではないでしょうか?そうした公約実現に真剣に取り組む議員の汗と苦しみが伝われば、いつか政治を信頼したいという人が3割を超えたアンケート結果が出るかもしれません。地方議員も含め、議員たるもの、まずは自身の票計算より、天下国家と地域社会に目を向けた公約実現のための不断の努力が評価される仕組みづくりを公約として選挙に臨むべきものかもしれません。

吉岡 慶太  東京都北区議会議員(無所属)アゴラ出版道場3期生
区職員(23年間、生活保護ケースワーカー10年他)を経て、2015年から現職(1期目)