採用活動の「解禁破り」を批判し自身も破る朝日新聞

山田 肇

朝日新聞デジタルが11月27日付で『就活の「解禁破り」中小は6割超 売り手市場続き苦心』という記事を掲載した。「来春卒業する大学生の就職活動で、約6割の企業が6月の解禁前に採用選考活動を始めていたことが、大学の団体でつくる就職問題懇談会の調査でわかった。」と伝えている。

就職問題懇談会は国公私立の大学、短期大学及び高等専門学校関係団体の代表で構成されている。2016年9月29日には、来春18年春の卒業生の採用活動について「平成29年度大学、短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職について(申合せ)」を文部科学省サイトに公表した。申し合わせの主な内容は、会社説明会は3月から採用活動は6月からとするように企業に強く配慮を求めるというものだ。

懇談会の申し合わせが頼りにしているのが日本経済団体連合会の『採用選考に関する指針』である。経団連が6月から採用活動を開始するといった内容の指針を16年9月20日に公表したので、それを受けてすぐに申し合わせがなされたわけだ。

それにも関わらず約6割の企業が6月という申し合わせの前に採用選考活動を始めていたことを、朝日新聞は「解禁破り」と表現した。

しかし、日本企業の大半は経団連に加盟していない。指針を守る義務はこれらの企業にはなく、指針の効力は極めて限定的である。懇談会の申し合わせも企業に配慮を求めているだけだ。それを「解禁破り」とは失礼な表現である。

僕は繰り返し、こんなに力が弱い指針など廃止しようと提案してきた。採用は大きな経営課題であり、企業は他の企業に先んじてよい人材を確保しようとする。しかも競争相手は日本企業だけとは限らない。だから3月や6月というように時期を制限することは間違っている。

就職協定が大きな影響力を持っていた昭和時代で、朝日新聞は時計が止まっているらしい。

ところで、朝日新聞採用チームのTwitterに2月18日付で「本日は大阪本社で会社説明会!現在、パネルディスカッション中。午前の部は満席ですが、午後の部はまだお席がございます。MYページからのご予約まだ間に合いますよー。」と出ているのだが、自身の「解禁破り」は問題ないのだろうか?