山口達也さんは日本のエミネムを目指して欲しい

田中 紀子

山口達也さんの事件で、どこのワイドショーでもボロクソに彼の人格を貶めており、日本のコメンテーターってつくづく、自分の保身しか考えていないなぁと、改めてうんざりさせられる思いです。

道徳的に清廉潔白な綺麗事を言っていれば、自分の立場は安泰とばかりに、昭和の時代から止まったままの精神論を振りかざしていますが、そうやって人を葬り去ろうとすることが、社会の悪循環となっていること、ご自分たちの害にこそいい加減気がついて欲しいです。

ましてこの事件、示談が済み、被害届も取り下げられ、被害者の親御さんから、「この過ちによって1人の人間の未来がすべて奪われてしまうことは私たちも望んでおりません。」とコメントが寄せられております。

ですから私たちがこの事件で本当に考えなくてはならないのは、真の再犯防止であり、山口さんの進むべき道ではないでしょうか?人を社会の片隅に押しやり、孤立させることが決して良い結果にならないことは、すでに皆さんご存知の通りです。

日本社会は一度失敗を犯した人間を、叩き潰すのではなく、どうやって再スタートを応援していくか、そのためのサポート体制をいかに作っていくかに、目を向けていくべきだと思います。

私は、先日もアゴラさんに書いた通り、山口さんはアルコール依存症だと思っています。

山口達也さんは依存症の診断と治療を受けて欲しい

そして、多くの専門家も同じ見解を示しています。

ですから、ジャニーズ事務所は責任を持って、謹慎だけでなく、依存症の診断と治療に繋げて欲しいと思います。

また日本のメディアには、依存症からの回復がどのようなものか?
回復者にはどのような役割があるのかを、この機会に是非知って頂きたいと思います。

欧米には依存症からの回復者が、いくらでも復帰し活躍しています。
そしてその姿は、私たち依存症者を大いに勇気づけ、回復の継続を後押ししてくれています。

つい最近も、超大物アーティストから嬉しいニュースが飛び込んできました。
それはあのエミネムさんが、薬物をやめて10年の経過報告をファンにしたことです。


この記事でエミネムさんが手にしているのは、薬物依存症者の自助グループNAで、自分が薬物を断った記念に毎年貰えるメダルです。

私たちは自助グループに繋がった日をBirthdayと呼び、人生の再スタートを切った日としてお祝いするのです。

これら自助グループは、
アルコール依存症者なら「AA」その家族なら「アラノン」
薬物依存症者なら「NA」、その家族なら「ナラノン」
ギャンブル依存症者なら「GA」、その家族なら「ギャマノン」
と呼ばれる世界的組織で、もちろん日本にもあります。

エミネムさんがすごいと思うのは、自分が依存症者だと認め公言し、そして回復を続けている自分の姿をメッセージにして、「リラプス」(再発)や「リカバリー」(回復)といった、数々の名曲を作り大ヒットを生み出していることです。

私をはじめ日本の多くの依存症者は、エミネムさんをリスペクトし活躍を応援しています。
アメリカで行われるNAのワールドコンベンションなどでは、エミネムさん以外にも回復した超大物アーティストが登場し、コンサートを開催し、大盛り上がりのなか、世界中から集まった数万人の仲間達と共に回復を祝うのです。

山口さんのこれからに必要なことは、おそらく彼は依存症と思われるので、まずその自分の病気を認め、病気の中にいた時に起こした、様々な狂気の出来事を正直に告白すること、そして、それらの誤った行動に対し、可能な限り埋め合わせをすること、といった自助グループで行われている、回復プログラムそのものだと思います。

そしてこのプログラムによって回復した暁には、なんらかの形で、ご自身の回復プロセスを発信して欲しいと思います。
その発信こそが、同じ病気で苦しむ仲間達を助けるエールになるのです。
あなたの活躍する姿こそが「回復した先には、明るい未来が待っているんだ。」と信じることができるのです。

回復には、輝いているロールモデルが必要です。
回復しても、社会で孤立してしまうのでは、回復する勇気が持てません。

ですから私たちは、山口さんと同じ釜の飯を食った芸能人たちが、手のひら返しで、あなたの人格をどれだけ攻撃しようとも、あなたが私たちのロールモデルとなって、再び歌手として輝き、DASH村で新しい挑戦に挑んでくれる日を信じて待っています。


編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2018年4月29日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。