記者と喧嘩する前代未聞の司会:日大が危機対応の黒歴史に金字塔

2018年05月24日 00:30

すでに橋下さんが述べているが、日大の緊急記者会見は、世間の心象を悪化させるだけだった。危機対応の記者会見は、報道陣を通して社会に対し、事実関係や、不祥事の引き金になった要因について丁寧に説明するものであり、さらには、組織に向けられた世間の厳しい視線を1ミリでも和らげる「世論対策」も重要な目的のはずだ。

前日に“告発”会見した宮川泰介選手とは、反則の指示をめぐる事実や意図に関して異なる見解を示しただけならいざ知らず、司会の進行を務めた日大広報部の米倉久邦氏が、会見が続いていて、内田前監督がまだ話そうとする姿勢もみせる中で、幕引きを図ろうとした。

日本テレビ「NEWS ZERO」より

記者会見の頃合いをみて終わりにもっていくのは、たしかに現場の広報責任者の判断で行うものであり、報道陣とのせめぎ合いはよくあることだ。

しかし、このあたりは、大阪都構想の住民投票という大型選挙で惜敗した際の橋下さんたちの記者会見とはあまりにも対照的だった。敗戦の会見では、橋下市長(当時)、松井知事は報道陣からの質問が途切れるまで「時間無制限」で対応した。

同会見は、不祥事ではないが、橋下さんが「負けたら政治家を辞める」と公約し、組織的には甚大なダメージを受けた直後という意味では、同じく重大局面での記者会見だ。投票率が70%、全国的にも関心の高かった一大選挙ということで、しっかりこたえようと姿勢を示したことで有権者への誠意は十分伝えられたように感じられた。

翻って日大の記者会見。仮に事後の都合があっての判断だったにせよ、司会の米倉氏が「同じ質問の繰り返し」などと取材側の質問を一方的に評価してみせたのは、あまりに異例だった。そればかりか、過去の失敗例と異なり、逆ギレした当事者ではなく、司会が激しい口調で取材者と押し問答をするような事態は前代未聞だ。これまで数ある危機対応会見をみてきた中でも「最悪」だったというしかない。

極め付けは、取材者の一人から「あなたの(打ち切り)発言で日大のブランドが落ちますよ!」と、怒りの矛先を向けられた際に、「落ちません」と喧嘩腰で真正面から打ち合ってしまったのは、世間の心象を形成する上で致命的なダメージだった。

ネット上の情報では、米倉氏と同姓同名の大手通信社の元論説委員長がいることから、同一人物とみる向きがでている。当初は報道の素人が対応していたように思ったが、もし、そのとおりだとすれば、編集幹部のノリで若い記者たちの質問を「くだらない」と一蹴してしまったのだろうか。(追記①この点はまさかと思いたいだけに、あらためて事実が明らかになった段階で論評したい→追記②12:00:テレビ朝日等の報道によれば、米倉氏は共同通信の元論説委員長のようだ)。

しかし、元記者であろうと、なかろうと、あの司会ぶりは、報道の現場を知っていた人間とはとても思えない。強引な幕引き、一方的な質問の評価などをすれば、自らの所属組織にどのような影響が与えるのかをわかっていないとしか思えない。

なお、肝心の真相究明だが、内田前監督は第三者委員会の設置を明らかにしていたものの、遅きに失したとしかいえない状況だ。警視庁の捜査を可及的すみやかに行うべきとあらためて思った次第だ。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑