廃業する前にビジネスDOを検討してみたい理由

2018年08月06日 06:00

画像は書籍書影(筆者撮影)

後継者不在で、廃業せざるを得ない会社が増加している。会社にとって最大の売り物は、会社そのもの。廃業によって、これまで積み上げてきたものをゼロにすることはない。次世代へ適切に引き継がれることは、会社に関わる人だけではなく、社会的にも大きな価値がある。中小企業を廃業から救う、新しい仕組みとはなにか。

今回は、『後継者不在の問題は、ネットで解決! 会社は、廃業せずに売りなさい』(実業之日本社)を紹介したい。著者は、高橋聡さん。中小企業経営者とスタートアップ経営者のふたつの顔を持っている。

「倒産」と「廃業」は違いはなに

「倒産」と「廃業」は全く異なる。読者の皆さまはその違いを理解しているだろうか。意外と正しく理解をされていないことが多い。

「倒産は、一般的には借入金や買掛金などの債務を返せなくなる状態のことで、金繰りに困窮して経営が破綻することをいいます。廃業は経営状態に関係なく、会社をたたむなど自主的に事業運営をやめることをいいます。倒産は社長の自主性に関係なく発生するのに対して、廃業は社長が自主的に行うという点に違いがあるのです。」(高橋さん)

「日本における年間の休廃業件数は、2015年約3万件、倒産件数は約8000件です。実は、自主的に休廃業する会社の方が倒産してしまう会社の数よりも4倍以上も多いのです。約3万社の半数に当たる約1万5000社は、黒字の会社と予想されていますので、引き継ぎ先が見つかれば存続できる可能性が高いということになります。」(同)

黒字ということは、経営は健全であると考えられるが、年間1万社以上も消えていっている現状は、社会にとって大きな損失ではないかと、高橋さんは警鐘を鳴らす。この問題を解説する施策として、M&Aを推奨している。

筆者もコンサルティング会社出身で、経営には多少覚えがあるのでいくつかのリスクを提示したい。まず、中小企業の多くは粉飾決算をしていると言われている。PLは健康診断なので粉飾が見えにくい。まず、多くの企業では、前倒し計上を常態的におこなっているはずである。確定していないものまで計上するので、後から訂正する事態が発生する。

経営的にインパクトがある数字だと、銀行から呼び出しがあるが、それならリスケジュールを引けばいい。担当者も自分のマイナス評価にしたくないから結果的には見逃すことになる。禁じ手かも知れないが、当該企業がコンサルティング案件発注者の場合、会社を倒産させないためにあらゆる策を講じるのがコンサルタントになる。

顕在化していない保証債務とは

ここで紹介するのは、コンサルタントと銀行員のやり取りになる。コンサルタントが銀行員とこのような交渉をすることは珍しくない。外資系ファームには都銀出身者が多いので、対峙方法はすべて見抜かれている。

----ここから----
コンサルY氏「まさか、案件を失注するとは夢想だにしませんでした」
都市銀行X氏「いずれにしても約束どおり、来月末までに全額引き上げます!」
コンサルY氏「無理です。まずはリスケジュールを引き直します」
都市銀行X氏「ご冗談を・・・担保を差し押さえて競売ですね!(きっぱり)」
コンサルY氏「つまり当社は、あなたに“そそのかされた”ということですね」
都市銀行X氏「いきなり、なにを言うんだ。失敬な!!」
コンサルY氏「リスケジュールといっただけだ。あなたの責任も明確化させる!」
都市銀行X氏「そんなことをしたら、私の評価に傷がついてしまう」
コンサルY氏「倒産に追い込まれるなら一蓮托生だ!逃げ得はさせない!」
都市銀行X氏「わかった、わかった!あと3ヶ月は待つように調整する!!」
----ここまで----

粉飾は脈々と続けられていく。しかし、PLそのものは健全経営。中小企業M&Aのリスクは「顕在化していない保証債務」を有している可能性があること。銀行でもわからないものを査定しようがない。それでも、M&Aは有利といえるのか。

会社にとって最大の売り物は会社そのもの

「私がM&Aというものに興味を持ったのは、自身のアメリカへの大学留学の経験からだと思います。ホームスティ先のホストファミリーは実業家として大成功していましたが、『会社で最も大切な売り物は会社そのものだ。会社は常に売れるように磨いておきなさい』とアドバイスを受けたことが記憶に残っています。」(高橋さん)

「日本の中小企業の現場に入ると、地方にはM&Aを手伝ってくれる専門家はあまりに少なく、実際には地方の中小企業にM&Aの選択肢はないことを知りました。お客様が会社の廃業とともに悩まされている現状に強い違和感を持つようになったのです。」(同)

中小企業庁が刊行した「事業承継に関する現状と課題について」に興味深い記述がある。「経営者が交代した企業や若年の経営者の方が利益率や売上高を向上させている」「経営者の年齢が上がるほど、投資意欲の低下やリスク回避性向が高まる」というもの。高橋さんは、M&Aは、地方創生の切り札になると主張する。

「息子が継いでも、M&Aで第三者が継いでも、その後継者は会社を成長させようとさまざまな挑戦を繰り返す。そこに新しい商品・サービスが生まれ、雇用が生まれ、お金の需要が生まれ、地域社会が潤うきっかけが生まれてきます。」(高橋さん)

M&Aの鍵は情報の信頼性に尽きる。本書は、丁寧な説明が付されており明瞭である。後継者のいない企業経営者やM&Aに興味のある事業者、起業家におすすめしたい。

尾藤克之
コラムニスト

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