クレジットカードがキャッシュレスの主役になれない理由

2018年08月14日 06:00

日本のキャッシュレス決済比率が世界的に見て低いことは、最近メディアでもよく報じられているのでご存じの方も多いだろう。経産省の資料によれば2015年時点で韓国はキャッシュレス決済比率が89.1%、中国は60.0%、スウェーデンは48.6%、アメリカは45.0%の一方で日本は18.4%とドイツに次いで低い。政府はこれを2027年までに40%程度まで引き上げたいようだが、実現には大変な困難がある。

この背景には、強盗や盗難の危険が少なく、偽造紙幣もほとんどなく、ATMが至る所にあるので、現金決済に不自由を感じないといった日本の特殊事情があるが、それだけではない。特に現在日本のキャッシュレス決済の中心となっているクレジットカード決済については、解決すべき様々な課題がある。

インターネット上の買い物についてはクレジットカード決済が進んできているが、お客様がお店に来て決済する対面決済の世界では、まだまだカード決済の比率は低い。特に首都圏を離れて地方に行けば、依然として現金決済が完全に主流である。

これには幾つか理由が考えられるが、その最大のものは、カード決済をした際に、お店(クレジットカードの加盟店)がクレジットカード会社に支払う手数料が高いことがあげられる。日々厳しい競争にさらされ、利幅が薄くなっている加盟店にとって、以前よりは低くなってきたとはいえ、売上代金の3.5~5%、業種によってはさらに高い手数料をカード会社に支払うのは容易でない。手数料が仮に4%だとして、月商が100万円の商店は毎月4万円を支払わなければならない。残り96万円から仕入、家賃、人件費などを払うのだから、この4万円は痛い。

また、高い手数料のほかにも、クレジットカード決済だと売上金の入金が、通常半月から1か月後になることや、狭いレジの周辺に、クレジットカードの決済端末を置くと狭い場所がさらに狭くなってしまうというデメリットもある。複数のクレジットカード会社と契約すると、場合によっては複数の端末を置く必要が生じることもあり、レジ回りが端末で占拠されるだけでなく、店員もそれぞれの端末の使い方に習熟する必要が生じて大変だ。

一方でクレジットカード決済にすることのお店にとってのメリットといえば、クレジットカード払いだとお客様にポイントがたまるので、お客様がほかの店に行かずにクレジットカードが使える自分の店の方に来るようになることが考えられるが、実際にはその効果は目に見えてあるわけではない。

手元に現金の持ち合わせがないお客様がいてもカード払いができると商売の機会を失わずにすむというメリットや、カード払いにすれば売上金を金融機関に入金する手間や日々の釣銭の用意が不要になるほか、現金の受け渡しミスや店員による現金のちょろまかしといったことが無くなるといったメリットもある。

しかしこれだけでは、お店の店主にカード決済の導入を決意させるには不十分だと思われる。実際私も、7年間クレジットカード等に関係する会社にいて加盟店開拓をしたが、なかなか容易ではなかった。

したがって、クレジットカード決済の普及を図るためには、まず加盟店が高いと感じている手数料を下げることが必要であり、実際、経産省も手数料を低く誘導したいと思っているようだが、クレジットカード会社にはクレジットカード会社の事情があって、もうこれ以上大幅な引き下げは難しい状況にある。

この点に関しては稿を改めて論じたいと思うが、日本のキャッシュレス化は、クレジットカードの利用拡大を目指すだけでは無理だと思う。

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有地 浩
株式会社日本決済情報センター顧問、人間経済科学研究所 代表パートナー(財務省OB)

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