ゴーンと「密約」を結んだのは誰か

2018年11月28日 21:00

ゴーン事件は毎日のように数字が変わるので、先週の記事を訂正しておく。そのときは日経が「SAR40億円」、朝日が「退任後の顧問報酬80億円」と報じて、どっちが正しいのかわからなかったが、その後日経はSARについて書かなくなった。どうやら「顧問報酬」が本筋らしい。

日産サイトより:編集部

その内訳をNHKは「退任後に競業に就くことを避けるための契約金としておよそ35億円、役員退職の慰労金としておよそ25億円、コンサルタントの契約金としておよそ20億円」と書いているが、ゴーンが年俸20億円のフォードから二度にわたって引き抜きを受けたことへの対抗策だったとすれば、異常な金額とはいえない。

問題は有価証券報告書にそれを開示しないで、8年間にわたって「総額10億円」と記載したことだ。これについてけさの日経は、ケリーが「外部の法律事務所や金融庁などに問い合わせて処理した」と供述し、有報への記載は必要ないとの見解が記されていたと報じている。2011年から個別開示するとき、金融庁から了解を得ていたとすれば、逮捕容疑である金商法違反は崩れる。

これまでゴーン側は、取り調べに対して過少記載の事実は認め、それは「当局から適法と認定されたので違法とは認識しなかった」という主張に絞っているようだ。この種の事件では経営者の「故意」の立証が最大の争点になるが、これは当然、検察も知っているので、故意を立証する証拠をもっているはずだ。司法取引に応じた2人の役員の供述や、電子メールなどがあるのかもしれない。

簿外処理が連結対象外の海外子会社で行われた場合には「故意の所得隠し」と認定できるが、本件ではそういう報道はないので、日産本体か連結子会社で支出されたと思われる。これが退職給与引当金のような将来ゴーンに対して生じる日産の債務80億円の処理だとすると、違法とは断定できないようだ。

これを2011年に金融庁が「未確定の債務なので有報に記載しなくてもよい」と認めたとすると、ゴーン側は「金融庁の解釈が変遷した」と主張できるが、NHKの報道のように「その計画は財務部門も知らなかった」とは考えにくい。少なくとも司法取引に応じた役員は知っていたはずだが、西川社長はこれを今年3月まで知らなかったと主張している。

これが事実だとすれば、ゴーンと以前の取締役との「密約」で処理が行われたと考えるしかない。これはきのう出てきたゴーンの投資損失17億円を会社に付け替えたという話とも共通する疑問で、ゴーンの主張だけで銀行が勝手に口座を変更するはずがない(日産の財産権侵害になる)。会社側でこの「損失補填」を認めた取締役がいたはずだ。

国税は今回の事件に沈黙しているが、この「顧問報酬」80億円を所得とみなすと、超大型の脱税事件になる。世界的にみると「経済事件の刑事犯罪化」は行き過ぎの面もあるが、今回は大型の不祥事であり、過去の事件に照らしても起訴はやむをえないのではないか。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 学術博士(慶應義塾大学)

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