問題は日韓関係ではない。韓国自身である

松川 るい

朝鮮半島について。韓国の反日が留まるところを知らない状況になっている。と、少なくとも日本人はそう受け止めている。日本人は寛容というかお人好しな民族だが、韓国についての怒りを通りこした冷めきった見方は既に定着してしまったと言える。

一般の韓国人は反日でもなんでもないのに、本当に残念なことだ。上にいけばいくほどダメになるのが韓国の特徴だ。独りよがりな「正義」とやらで常に庶民を犠牲にしてきた。が、今、私が言いたいのは、問題は、日韓関係ではなく、韓国自身だということである。

10日、記者会見に臨む文在寅(韓国大統領府FBより:編集部)

1.最近のこと

慰安婦財団解散、旭日旗、竹島上陸、また別格に深刻な「徴用工」(旧朝鮮半島出身労働者)判決と既にボトムかと思っていたところに、レーダー照射事件。さらには、ついに旧朝鮮半島出身労働者判決の差し押さえ決定。日本政府は請求権協定に基づく協議を要請したのに対し、韓国は、「日本が強硬な態度を取るせいで日韓関係が危機になっている」と逆切れ・責任転嫁。盗人猛々しいとはこのことだろう。この調子ではまだまだ底なし沼に日韓関係は悪化しうる。

このレーダー照射事件、攻撃準備行為とされる行為なので深刻な問題であることは間違いないが、それでも、本来なら、日韓軍当局同士で基本的に解決できる、つまり、事実関係を淡々と確認して謝罪すべきを謝罪すれば済む話ではないかと思う。しかし、既に日韓関係が不信の渦の中にあるのでそうはいかない。

既にレーダー照射事件については、韓国から99%日本の映像を用いて(韓国独自の映像はほんの10秒)、お得意のBGM加工までした映像が出てきたが、ツッコミどころ満載である。が、この点については、既に多くの方が指摘されているのでわざわざここで繰り返すのはやめておく。

ただ、今回改めて、韓国にとっては「真実は大して重要ではない」ということだけははっきりした。韓国の映像は低空飛行に論点をすり替えるもので、攻撃的なレーダー照射を韓国が行っていないことを何ら証明していない。

韓国軍のはねっかえりが反日に燃えてついやってしまった、のか、北朝鮮船を「救助」している行為自体を隠したかったのか、北朝鮮船の活動は本当にただの漁船なのかそれとも瀬取りなのか、または実は北の工作船なのか、といったことにより、事態の深刻度は全く異なる。

が、いずれにせよ、攻撃準備に該当するレーダー照射など、どんな出来心があっても、中国やロシアましてや米国には絶対にやらないわけだから、日本なら何をしても許されるという甘えと驕り以外の何者でもないことだけは指摘しておきたい。さらにいえば、これをうやむやにしても日本なら許してくれると舐めているのだろう。または、明かされても困る事実(安保理制裁違反など)でもあるのか。

新日鉄も資産差し押さえ決定前に株売却しておけば良かっただろうに、と思う(保全措置かなにかあってできなかったのかもしれないが。)。今後、同様の差し押さえ判決が相次ぐことは明白なので、まだ、訴えられていない日本企業も、その懸念があるなら、早急に韓国から資産を引き上げるべきである。実害を未然に防ぐという意味でも、韓国に対する事実上の制裁という意味でも意味があると思う。

2.破綻寸前なのは、日韓関係、というより韓国自身

しかし、私が今一番言いたいのは、文在寅政権では無理、という一言である。というか、文政権自体かなり限界に近付いているように思う。任期を全うできるのだろうか。文政権の間は何をやっても無駄であり、早く退場してもらうに越したことはないが、日韓関係を何とかするのは次の政権(左派が継続するにしても)でしか無理であろう。日韓関係もボトムだが、むしろ問題なのは韓国自身である。韓国自体が危機に陥っている。

そもそも、文政権はどれぐらい持つのだろうか。経済運営に失敗しており、経済状況は極めて悪い。外交的にも孤立している。南北ファーストをやりすぎたせいで米韓関係は冷え切っている。マティス長官の退任もあり、在韓米軍の撤退の可能性はずっと高くなっている。日韓関係はボトムである。THHADをめぐる三不政策以来改善したとはいえ中国との関係も大してよくない。頼みのというか、恋人になりたい北朝鮮からは、価値を値踏みされている。

正直、米韓同盟が揺らいでいる中で、韓国が米国に対して有する影響力は減じており、北朝鮮からすればATMとしてはともかく、対米宣伝工作部としての韓国の価値は相当下がっており、対北政策もおそらく上手くいかないだろう。米国は韓国から頼まれたからといって「はいそうですか。韓国がそういうなら」と動くような状況にない。

知日派などは、殆どパージされるかその恐怖におびえている状況で、まともな国家運営をしていると思えない。よく韓国の宮廷ドラマがあるが、本当に、別に現代も全く変わらないじゃないかと思う。王様派と王様を追い落とすことを狙っている一派とが熾烈な権謀術策を繰り広げ、騙し騙され一族郎党皆殺しみたいなやつである。

そして、何よりも、韓国人自身が韓国をあきらめている。移住を希望する韓国人の数はどんどん増加しているそうで、それは、愛国的な威勢の用意言動とは裏腹に、韓国という国の将来に希望が持てず、韓国に対してコミットメントを感じていないことを意味する。

韓国大統領府FBより:編集部

文政権は、南北ファーストの政権だ。韓国ファーストですらない。というか、政権的には、強いていえば、南北連結ができることが韓国100年後の繁栄の道ということで韓国の国益と思ってやっているものと思う。つまり、短期的には韓国の国益が害されても良いと思っているとしか思えない。

実は、韓国のかなり右の保守派の国会議員と数か月前に会った際に、彼らは、ムンジェイン大統領は意図的に韓国を弱体化して北朝鮮に差し出そうとしているという趣旨のことを述べていたのだが、私はそれはさすがにそんなことはあるまいと思っていた。しかし、最近はよくわからなくなってきた。なぜなら、結果として、韓国経済の弱体化、米韓関係の弱体化、日韓関係破綻寸前と、正直、喜ぶのは北朝鮮と中国という状況(中国すら喜ばないかもしれないが)になってきているからである。

文政権は、北朝鮮のことしか考えていない割には対北政策でも戦略的ミスを犯しているとしか思えない。北との融和を進めるためには、米国の理解が不可欠であり、良好な米韓関係が必要だ。同じく中国とも。そして、ATM役をやってもらいたい日本とも。こうした鍵となる大国が「韓国のいうことなら聞いてやろう」というムードであることが、韓国の対北外交のレバレッジなのだ。それなのに、文政権は、これら全ての国との間での外交に失敗している。つまり、結果として、対北レバレッジを減じている。

そして、文政権のもう一つの野望は歴史の書き換えである。何が何でも韓国を「戦勝国」にしたいのだ。日本帝国の一部として米国や中国と戦ったのが事実である。残念ながら、内ゲバ続きで弱小の上海臨時政府など全く国際的に相手にされなかったのが事実であるが(だからサンフランシスコ平和条約当事国にはなれなかった)、それは受け入れたくないのだ。

韓国が日本と一度でもきちんと戦ったことがあったなら日韓関係はここまでこじれていない。レーダー照射した韓国軍人も日本に疑似的にでも「戦って」みたかったのだろうか。ブログにも書いたしテレビ番組でも何度も言ってきたが、韓国の反日は日本と戦ったことがない、同じ土俵にたったことさえない、ということからくる。だから、今無理やり「戦って」いるわけだ。

勝とうが負けようが、同じ土俵に立って戦ったなら、勝敗結果如何に関わらず和解は可能である。日米然り、米ベトナム然り、独仏しかり。しかし、日韓はそうではない。だから、韓国自身が、自分のトラウマを克服しない限り、反日は続くどこまでも。

日本外交にとって朝鮮半島が重要であることに変わりはない。福岡と釜山はフェリーでたったの3時間の距離であり、かくも近接した場所に敵対的な国がいては面倒に決まっている。狭い海を隔てて国境を接する韓国には、友好国でなくとも少なくとも敵国にはなってもらいたくない。しかし、その重要性は、海路でしか他国と行き来できなかった8世紀と比べれば格段に落ちている。韓国が敵国にならないことを確保するための一番の上策は、米韓同盟がきちんと機能しているということである。

しかし、そもそも朝鮮半島が一体米国にとってなんの価値があるのだろうか、という極めて正当な疑問を抱くトランプ大統領自身は、在韓米軍など縮小撤退しても構わないと思っている。残念ながら、マティス長官の退任もあり、在韓米軍縮小撤退の危機は益々現実味を帯びている。残念ながら、日本は、その可能性も念頭に対馬を含め対朝鮮半島防衛を考えざるを得なくなるだろう。北極海がとければ、いずれにせよ、日本海はシーレーンとなるのであり、対馬はそのど真ん中に位置することになる。対馬防衛の重要性が益々上がる。

そのような観点からすれば、私は北朝鮮について、日本が独自に協議を行うことは十分ありだと思っている。北朝鮮の核放棄は益々遠のいているが、プランBは北朝鮮が親中であると同時に親米になることである。日本も韓国に気を遣う必要はもはやなくなっているのだから、直接北朝鮮との交渉を進めるべきだ。日本は、北朝鮮と友好関係を構築することを目指すべきだ。無論そのためには、大前提として、拉致問題の解決、核問題の一定の解決を含め米朝関係の改善が必要である。

韓国と異なり、金日成は日本軍と戦ったことがある。したがって、北朝鮮は反日であろうが、韓国に比べればねじれたトラウマは日本に対して持っていないので、将来についての関係改善は条件が整えばより心理的には容易ではないかと思う。

いずれにせよ、になるが、日本外交全体を見渡し時に、日本にとって、最大の課題は、同盟国米国のパワーが相対的に落ちる中で、中国という巨大で強大な隣国からの脅威をやり過ごし、国家の安寧と繁栄を維持するかということであり、朝鮮半島は重要ではあるが一部に過ぎない。しかも、朝鮮半島国家は、自立的に物事を決めることが難しい地政学上の状況(国のサイズと地理)にあり、朝鮮半島にリソースをつぎ込んでもリターンは極めて心もとない。

朝鮮半島は、常に中国やロシア、日本という大国に挟まれ、事大主義的にその立場を変えてきた場所であり、朝鮮半島に何か大きな期待をすること自体が間違っている。大国のパワーの増減に合わせて立場がころころ変わるのは朝鮮半島国家の宿命なのだ。むしろ、押さえるべきは、米中ロという地域大国との関係である。

そのために必要なのは日米同盟を基軸としたインド太平洋戦略であり、中国、ロシアとの関係改善である。したがって、日本は、限られた外交リソースを「文在寅の韓国」に余りつぎ込むべきではない。どこにどう転んでもプラスにならない。誤解されては困るが、韓国に迎合せよということではない。むしろ、ICJへの提訴だろうとレーダー照射事件の反論であろうと「徴用工」問題における対抗措置であろうと躊躇なく実施すべきだ。

ただし、それらは、韓国(ムンジェイン政権)が「異常だ」ということが示せればよいのであって、多大な外交リソースをつぎ込まないように留意すべきだ。どうせ長続きしない政権なのだから。

むしろ、日本がやるべきことは、日米関係を主軸にインド太平洋戦略を充実させ、価値と戦略的利益を共有する多くの国との連携を強化することであり、対中関係、対ロ関係を改善することである。外交リソースとは、限られた数の外交官・外務官僚の24時間の時間の使い方(使わせ方)であり、外交予算であり、日本の持つ国際的信用力である。日本外交の中で韓国の占める割合が相対的に小さい状態の方が日本の国益だと思う。日本が軍事的に外交的に経済的に強くなることである。TPPや日EU・EPAはその意味で大変素晴らしい。インド太平洋戦略を米国の方針とさせたことも秀逸だ。

あとは、日本が強くなることである。強くなる方向にあるという見通しを示すことが全てだ。つまり、防衛力を格段に高め、若者がイノベーションを起こせる環境を整え、少子化を克服して、日本が将来とも繁栄するのであろうという将来見通しを世界に示すことである。 朝鮮半島国家は、常に強い国の言うことしか聞かない。

本年は、1919年3月1日という韓国が「建国日」(本来の建国日は、1948年)と変更したいと考えている反日デモ行進、3.1運動から100周年記念の年であり、反日をアジェンダに南北朝鮮が融和を図ることも想定される難しい年である。文在寅大統領の間は、日韓関係は悪くなることはあれど良くなることは期待できない。

私は、韓国については、文在寅政権の間は、冷めた透徹した外交を期待したい。最後に、これも冒頭の繰り返しになるが、一般の韓国人が反日というわけでもない。多くの良識ある韓国人は北朝鮮にかしずくかのような文政権を憂えている。次の政権までおそらく日韓関係は悪化の一途を辿るだろうが(致し方ない。毅然とした態度は維持すべき)、文政権は諦めても、韓国自体を将来に渡って諦める必要はない。

朝鮮半島については、期待せず、多大なリソースをつぎ込まず、大国関係を固め、地球儀を俯瞰する日本外交全体の中でできるだけマージナライズ(辺境化、最小化)し、政府間関係ではなく一般の韓国人を主人公とした関係に注力するのが上策だ。


編集部より:このブログは参議院議員、松川るい氏の公式ブログ 2019年1月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、「松川るいが行く!」をご覧ください。