法治より人治:醜態をさらした高野連のガバナンス

2019年02月22日 06:00

日本高野連の理事会がおととい(20日)開催され、最近の懸案事項に関する決定が相次いだ。報道を見ると、新潟県高野連が今春からの導入をめざす投手の球数制限の再考を申し入れたことに焦点が当たっているが、その喧騒の裏で、高知商野球部員の有料のダンス発表会出演をめぐる野球部長の処分は見送りがシレッと決定した。

報道としては今後の不確実性を孕んだ球数制限のほうを前面にしてしまうのは仕方ないが、むしろ、筆者は高知商への決定の方が高野連のガバナンスの問題を浮き彫りにし、球数制限の問題の本質とも繋がってくると思える。というのも、報道されたコメントを見るだけでも、法治主義とは程遠い「人治主義」的な体質が垣間見えるからだ。

高知商の問題は1月に2度書いたが、

罰せられるべきは高知商でなく高野連。政治が介入せよ
川淵さんの檄に呼応せよ!“明治脳”の高野連を平成のうちに解体せよ

あらましを簡単に振り返ると、甲子園で応援してくれたダンス同好会の御礼に、引退した3年生部員が同好会主催のイベントにユニホーム姿で出演したことを問題視。これが「有料」だったことが、学生野球憲章が禁じる「野球部員の商業利用」に抵触するとして、野球部長の先生を謹慎処分する方向で検討が進んでいた。

川淵三郎氏(日本トップリーグ機構サイトより:編集部)

しかし、有料といっても会場の経費を賄うようなレベルで「商業利用」の性格があるイベントではないのは誰が見ても明らかだった。高野連のアマチュア原理主義とも言える対応ぶりに、川淵三郎氏らが異論を唱えたことで高野連はトーンダウン。野球部長の処分案を日本学生野球協会に上程せず、結局、今回の理事会で正式に処分を「見送った」という次第だ。

世論に完敗した高野連だが、高知商を「無罪放免」にしていない疑い

高知商の地元、高知新聞は「高野連、世論に完敗!?」という見出しを踊らせていたようだ。まずは野球部長と部員、ダンス同好会など関係者のみなさんの尊厳が守られたことは喜ばしい。もちろん、川淵氏らインフルエンサーの義憤で火をつけた世論の後押しが決定打だったのは間違いない。しかし、それはあくまで外から見たときの「認識」だ。報道された記事をよく読むと、高野連の内側からの認識は決して「無罪放免」だった訳ではないようだ。時事通信によると、

①入場料(500円)は施設借用の費用に充てているため、野球部員の商業的な利用を禁じる日本学生野球憲章には抵触しないと判断。

②同憲章の改正前にはユニホーム姿での出演を禁じる規定があったが、現在は明文化したものが整備されていないため、処分対象にはならない

という2点がポイントだったようだが、①は入場料発生の理由が経費であることくらい、高知商に対し事情聴取をまともにやっていなかったのであろうか。あるいは知っていた上で処分をしようとしていたのであれば、今回決定を見送ったこととの矛盾が生じる。前者であれば、証拠固めをせずに立件しようとした怠慢捜査だったことになるし、後者ならガバナンスが、およそ「法治」ではなく、世論にビビって決定を二転三転するような「人治」の疑いが濃厚となる。

筆者は後者だったのではないかと疑っていて、高野連の担当記者たちも望月衣塑子氏ばりにここでこそ噛み付くべきではないかと思うのだが、いずれにせよ、②は①を受けた高野連の処分理由を正当化するための材料として、改正学生野球憲章の不備を持ち出したようにすら思う。

そして②であれば根拠がないからという「不起訴」処分にできる。そして今後同様のケースが出てきたときの具体的な対応策は先送りにすることで、野球部関係者の生殺与奪の実権を握る高野連の威厳とメンツはなんとか保つ効果はある。朝日新聞の法務部や顧問弁護士あたりが知恵をつけたのではないかと疑ってしまいそうな「見事」な理論構成だ。

つまり、刑事裁判風に例えれば「無罪放免」という楽観的な位置付けではない。検察官である高野連は、被疑者である高知商を嫌疑不十分を名目に「不起訴」処分にひとまず急場をしのいだというのが実際のところではないのか。

平成の次の時代に高野連は要らない

もし筆者の見立てがある程度、当たっているのであれば高野連は自らのご都合主義を覆い隠すために「理論武装」してきたに過ぎない。そして新潟県高野連が勇気をあげて全国に先駆けて導入しようとしている球数制限の試みをも潰しにかかってきているのだ。

日本高野連、新潟県に球数制限の再考求める:日本経済新聞(共同通信) 

高野連のガバナンスに対しては、自民党で高校野球の問題に詳しい議員たちから厳しい目が注がれ続けている。そのうちの一人のある党幹部は筆者との意見交換で、高体連と高野連の統合をも視野に入れている節すらあった。

両団体の統合がベストかどうかはなんとも言えないが、川淵氏に「頭の中は明治時代」と酷評された組織構造のままで、平成の次の時代も存続していいのだろうか。今のままの高野連が独占的に君臨する体制は、新しい時代には無用だ。

部活動として思い出づくりの高校野球をめざすのか、トップアスリート志向なのか、プロ直轄のユースチームも含めた三つ巴なのか、野球の取り組み方を多様化し、競争原理を働かせることで高野連も危機感は持つだろう。

所管の問題かもしれないが、鈴木大地スポーツ庁長官が本件で苦言を呈するのにとどまっているのが物足りなく見える。鈴木さん、五輪とラグビーW杯の準備でお忙しいとは思うが、他人事のように報道コメントしてばかりいないで、何らかのアクションをお願いしたい。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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