毎日新聞 vs 原英史氏 フェイクはどちらか

田村 和広

第二次モリカケキャンペーン開始

6月11日、毎日新聞は国家戦略特区ワーキンググループ(以下WG)座長代理の原英史氏に関する報道を行った。「国家戦略特区 政府ワーキンググループ委員関連会社※ 提案者から指導料200万円、会食も」というグレーな印象を帯びた見出しと、原氏の顔写真付きの関係図が掲載されていた。(※紙面とサイト記事との間で表記に揺れがある。)

これらは用意周到に準備されたキャンペーン報道だ。

毎日新聞ロゴ、原英史氏(衆議院インターネット中継)=編集部

原氏はインターネットサイトで即日反論

インターネットが発達する前は、報道された側はメディアスクラムの飽和的な取材と報道の攻勢に反論の声はかき消された。印象操作された大衆は、事実を知らぬままに一斉に「人民裁判」で非難したものだった。

しかし、インターネット論壇やSNSが十分発達した今は、マスメディアに虚構の報道がなされても、報道された当事者や事情を知る第三者が有効な反論をすることが可能となった。今回の報道に関しても、当事者である原氏は当日即座に反論した。SNSや言論サイト「新潮社フォーサイト」で、遮られることなく、言い分を全て公開したのだ。更に翌日には、アゴラでもその反論を掲載し、記者と毎日新聞とコメントした識者を対象として名誉毀損訴訟の準備を宣言した。

虚偽と根本的な間違いに基づく毎日新聞記事に強く抗議する — 原 英史

毎日新聞は翌12日にも続報を掲載

翌日の12日も毎日新聞は1面と29面で続報を掲載、自らの前日記事を受けて一定の論調を強く印象付ける記事を展開した。前日の原氏の反論に対応する追加情報も含まれていた。しかし、他紙はこの時点では沈黙し、本件ではなく年金キャンペーンに力を入れている。

毎日報道と原氏反論の各論点

毎日新聞の報道とそれに対する原氏の反論の主要な論点は以下の3点である。

【論点1】金銭授受と会食接待の有無

毎日:原英史氏の関係会社が指導料200万円を受け、会食の接待も受けた

原氏:そのような事実は一切ない。関係会社でもないし1円ももらっていない

【論点2】収賄罪相当かどうか

毎日:恒川隆生・静岡大名誉教授(行政法)の話「…原英史氏が公務員なら収賄罪に問われる可能性もある。…加計学園問題でも明らかになったように、規制緩和の当否以前に審査の過程が不透明だという疑念を持たざるを得ない。」

原氏:見出しと合わせ、「収賄罪」相当とまでコメントするのは虚偽の記事である

【論点3】WGは「審査」するのか

毎日:提案を審査・選定する民間委員が審査される側の法人を指導するのは問題だ

原氏:その認識は根本的に間違っている。提案を受けるのであって、審査・選定は行っていない。提案者とWG委員はタッグを組んで共に規制所管省庁と折衝する側である。助言はむしろ本来業務である

毎日新聞の記事分析

書き手の判断が混じる印象操作語や、誤解を招く表現が多用され、引用も不正確だ。一番主張したい「収賄罪相当」という言葉は、詳しいという第三者に語らせている。違法性などが無い(又は低い)ことを毎日新聞は認識しており、リスクヘッジをかけながら印象操作する常套手段だ。そして真の目的は、反政権政治運動と推測される。

具体的な印象操作内容

【不正確な定義】「委員関連会社」…関連会社は会社法または会計の用語であり、不正確

【印象操作】 まるで金銭の流れがあるかのように表記する関係図

【印象操作語】 「関与した」「伏せられている」「透明性また揺らぐ」「台本」「NGワード」「ヒアリング隠し」「問題が浮上した」「ブラックボックス」「虚偽であることが発覚すれば」「事実は確認できなかった」「加計問題に続き浮上」「伏せていたことも発覚」「不透明さ」「見解で触れなかった」他多用

【不正確な引用】取材では、原氏は否定したにもかかわらず食事をしたとして報道

【前提間違い】「協力関係にある」協力などしていない。「特区審査隠し」そもそも特区は審査しないし、業界内の妨害が予見されるので記録に反映しなかった

【他人語り】  「収賄罪」相当という、新聞としては書きたくても書けないメインメッセージを第三者に語らせることでリスクヘッジをしながら読者への印象操作を完成させている

こうして列挙すると、報道ではなく「運動」と言っても過言ではない印象がある。

記事掲載タイミング

どうもキャンペーンのタイミングを見計らっていたふしがある。今回6月11日というタイミングで第一報を掲載したが、折しも年金2,000万円不足問題で与党への追い風が弱まっていた上、そろそろ(選挙対策としての)消費税増税撤回が厳しくなる時期だ。そして、6月12日29面の記事において、毎日新聞は5月中に既に原氏への取材を行っていたことを記述している。

全て「状況」でしかないが、新聞業界は以前から倒閣運動などの際、政府の身動きがとりにくいタイミングでキャンペーンを張っている。それを考え合わせれば、タイミングに伴って連想される諸事情は、少なくとも完全否定はできない。

6月12日現在の印象

多くの点において原氏の言い分の方が正しく感じる。毎日新聞、原氏双方のこれまでの活動から受ける印象の影響も大きい。仮に原氏の言い分が正しいとすれば、毎日新聞がフェイクを書いているような印象を持つ。毎日新聞は、印象操作をし過ぎていて当該記事も信憑性がかなり低いからだ。しかし先入観は少なからず入り込んでいるので、どちらか一方のみを妄信することはできない。もちろん、直接事実を知り得る立場にないので断定は出来ない。(私は、原氏とは面識も利害関係も全くない。毎日新聞も同じ。)

毎日新聞は前回敗れた同じ戦術でまた戦うのか

森友・加計キャンペーンでは、政権支持率を多少は下げたが「倒閣運動」は完遂できなかった。多少は下げた安倍首相の支持率も、しばらくするとすっかり回復した。

ガダルカナルの戦いでは、正々堂々の正面攻撃ができないために、第一次総攻撃では迂回夜襲を行ったが作戦は成功しなかった。諸事情により同じ作戦で第二次総攻撃を行ったがやはり通用しなかった。

毎日新聞のキャンペーンは違うのだろうか。

田村 和広 算数数学の個別指導塾「アルファ算数教室」主宰
1968年生まれ。1992年東京大学卒。証券会社勤務の後、上場企業広報部長、CFOを経て独立。