財政制度分科会(平成30年10月)の防衛予算に関する資料を読む(12)

2019年11月08日 06:00

財務省の財政制度分科会(平成30年10月24日開催)において防衛予算に関しても討議されまた。その資料を財務省がHPで公開しています

Wikipedia:編集部

引き続きこれについて重要な指摘とその解説を行います。これで最終回です。

装備品の効率的な調達等に向けた取組み(P65)
財政制度等審議会財政制度分科会(平成28年10月20日)資料より

国内産業の組織再編・連携
✓ 「防衛生産・技術基盤戦略」では、「我が国防衛産業組織の特徴としては、欧米のような巨大な防衛専業企業が存在せず、また、企業の中での防衛事業のシェアは総じて低く、企業の経営トップへの影響力は一般的に少ない状況にあり、欧米諸国と比べて、企業の再編も進んでいない」とし、「事業連携、部門統合等の産業組織再編・連携は有効な手段」と指摘。

✓ また、同戦略において、「防衛装備品の生産は、その特殊性から、技術と資本について、相当の蓄積を必要とする」ため、類似の機能を有する複数の企業が入札で争うことで双方の企業が疲弊し、「防衛生産・技術基盤の弱体化が生じうる」と指摘。このため、「企業の『強み』を結集できるような企業選定方式の導入や、複数年一括契約による契約対象企業の絞り込み等の契約制度の運用を含め、産業組織の適正化を検討する」と記載。

✓ したがって、まず、非競争・非効率的な調達がこうした組織再編を阻害することのないよう、機会の平等や調達の効率化を徹底していく必要。 また、複数企業の強みの結集を促すような企業選定方式(JV型受注体制)の導入についても、早急に実現すべき。その上で、国際的な状況(※)も踏まえ、国内防衛産業の部門統合や事業再編の具体的な促進策を検討する必要。

これでも甘いと思います。完成品の装備に関して言えば、多くは大企業ですが、防衛売上はせいぜい数%のところが殆どです。しかも基本トリッパグレはない。ですから経営者は防衛部門を経営戦略では「誤差」の範囲と思っています。だからスキャンダルさえ起こしてくれなければいいと経営陣は思っています。改革だのそんなものは次の代の経営陣がやればいいと思っている。ですから問題が延々と先送りです。

そもそも同じ分野で零細規模の事業しかなく、官の側が食い扶持を割り振っているので潰れようがありません。ですがそれは限られた開発費、投資を数社で分け合うだけではなく、重複してリソース使用しているということです。少ないリソースを無駄使いしています。

好例は火器の類です。国内の防衛需要しかないのにミネベア、豊和工業、住友重機、日本製鋼所が存在しています。そして一人の設計者が一生に設計する製品の数も限られてくるわけです。

市場経済に晒されているわけではないので、製品や品質、コストを気にする必要もありません。そして官の側にもまともな装備をつくるための知見やノウハウもありません。
なんとなく外国を眺めて、欲しい物だけを選んで似たものを作らせればいいと思っています。

ですから、同じ分野で複数の企業がある場合、防衛事業は1~2社に集約すべきです。その場合、大会社の部門ではなく、独立した会社すべきです。ぼくは装甲車両に関しては三菱重工とコマツの事業を統合してまずはジョイントベンチャーの会社を立ち上げるべきだと言い続けていましたが官民の当事者が問題先送りを繰り返しているうちにコマツが事実上の撤退を決意しました。

これによってコマツの蓄積したハイブリッドを含むノウハウが霧消するでしょう。長年クズでも高いコストを払って調達し続けた結果がこれです。

ジョイントベンチャーから一歩進めて国が黄金株を持つ会社にして上場させるべきです。そうして株主の監視下におく。そうでないと非効率がまかり通ります。そして輸出を目指す。目指さない会社には防衛部門から撤退してもらう。これは調達を止めればいいわけですから実は簡単にできます。
無論世の中に完全な組織はありませんが、現状下ではこれがよろしいかと思います。

また輸出に関しては、素材、コンポーネント、デュアルユースから力入れていくべきです。第三帝国よろしく、我が首相官邸は華々しい戦果を好むので、「軍部」に飛行艇だの輸送機だの潜水艦だの大物狙いをしろと命じましたが、失敗続きです。誰か責任取ったんですかね?

実際にYKK、ソニー、パナソニック、トヨタ、帝人などは世界的に成功しています。こういう現実を素直に見るべきです。

またトラックなどは初めから輸出を視野にいれて作るべきです。近年はラインセンス生産といっても調達数がへり実態は単なる組み立て生産に過ぎない例が増えています。外国製は国内でライセンスするのではなく、オフセットを使って、世界で販売するその装備のコンポーネントや素材の受注を主にすべきです。

もっと根源的にいえば防衛省自衛隊の調達部門、防衛装備庁の改革が必要です。
いっそのこと装備庁の長官から幹部は全部お雇い外人にしてもよろしいのではないでしょうか。

いずれにしてもこのまま当局、防衛産業の当事者意識&能力の欠如が続けば防衛産業は自壊するでしょう。散々に血税を食いつぶした後で。

それを防ぐのは政治家の決断が必要です。防衛という票にならないが、重要な分野で働ける政治家を量産する必要があります。そのための制度が必要です。後は国会で秘密会議開くことができるようにすること。現状機密保持が義務化されておらず、罰則もないので討議内容がただ漏れ状態です。ですから役所が先生方(他の役所の官僚もですが)に情報を渡したがらない。ですから国会でまともな議論がなされない。

調達に関しては開発、調達を決定する前に、どのようなものを、いくつ、いつまでに、総額いくらで調達するのかということを納税者に知らしめるべきです。世論の監視のために是非必要です。
普通の民主国家では当然の如くやっているこれを防衛省はできていない。これがないから国会での議論がシャンシャンで終わる原因にもなっています。

それから防衛省の情報開示の強化です。装備に関しては他国がカタログで明らかにしているようなスペックは公開しても困る話ではありません。何でもかんでも秘密にするのは独裁国家や共産国です。
民主国家であるならば当然これを行うべきです。情報がなければ防衛議論は神学論争になります。

それから記者クラブ改革です。防衛装備や予算に大した興味もないのに、他の媒体やフリーランス、特に専門記者を排除して会見のみならず取材機会を独占しています。何の根拠もないのに、自分たちが報道関係者の代表であると僭称するのはアパルトヘイトやプロレタリアート独裁と同じシステムです。

しかもあろうことか、その町内会と同じレベルの民間の任意団体が防衛省で記者会見も行っているわけです。常軌を逸しています。記者クラブ改革なしに、装備調達の適正化は不可能でしょう。

■本日の市ヶ谷の噂■
「共通戦術装輪車」はMCVとともに即応機動連隊の中核となっていく車両で、すでにMCVが選定されているがそのうち指揮通信車型が250輛と最大。82式指揮通信車の後継もこれで行うとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年11月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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