国際興業お家騒動の最近の事情:りそな銀行にも問題が飛び火か

2019年11月27日 06:00

ども宇佐美です。

先日(11月11日)ちょっくら東京地裁に行って傍聴して参りましたので、ずいぶん長らく空きましたが、国際興業を巡る小佐野家のお家騒動の続報について簡単にまとめたいと思います。(ぼちぼち楽しみにしていらっしゃる国際興業社員もいらっしゃるようですし)これまでの経緯については適宜過去記事を参照にして、いただければと思いますが、簡単に言えば

「かの小佐野一族が、現在国際興業を支配する小佐野隆正一族(被告)と、2004年の米投資ファンドのサーベラスからの支援受け入れに際しての旧国際興業(旧KK)から新国際興業(新KK)への法人切り替え時に隆正の策略によって国際興業からパージされた故小佐野政邦一族(原告)、の二陣営に分かれて争っており、原告が被告に612億円強の損害賠償を要求している」

という日本史上最大規模の損害賠償の係争案件です。。。これでもまだややこしいですが、詳細後述するのでご容赦ください。。。なお原告の一人の小佐野匠は私の友人で、それが私が本件を長らく追っている理由です。

国際興業公式サイトより:編集部

1.証人尋問の論点の整理

さてこの2014年5月に始まった裁判はもう5年以上続いているのですが(当初はさすがに4年くらいで終わると思っていました…)、当日は原告、被告側がそれぞれ本件の関係者を証人として呼んで互いに尋問をする日でした。

私としては見る前から「いよいよ書類の中の人物が出てきて大詰めだな」と楽しみにしていたのですが、これが予想を裏切る笑劇の展開でなかなか盛り上がりました。ということで本題に入る前に、まずそれぞれが呼んだ証人の位置づけについて整理すると

・隆正側が招いた証人は元りそな銀行副社長、現大栄不動産社長の「石村等」氏で、国際興業の法人切り替え時(旧KK→新KK)のりそな銀行の担当役員

・政邦側が招いた証人はスポンサーとなった投資ファンド・サーベラスジャパン元COOの「三浦哲也」氏で、国際興業の法人切り替え時(旧KK→新KK)のサーベラスの日本人トップで、後には国際興業の代表取締役副社長も歴任

で、ここからもわかるように(私から見る限り)この裁判の最重要論点は国際興業の新旧法人切り替え時の隆正の行動を正当化できるかどうか、というところに絞られてきています。時系列を復習すると以下の通りです。

===================
① 2004年以前の旧KK時代は、国際興業の株主構成は政邦一族が40%強、隆正が40%弱、小佐野賢治氏の未亡人の英子氏が20%弱と分散していた

② 2004年に旧KKの資金繰りが悪化して経営危機に陥ると、隆正は以下の通り政邦一族に説明し、政邦一族に株式の100%減資(=つまり無償で手放す)に応じるよう脅迫

・ 再建パートナーのサーベラスグループやりそな銀行が現社長である隆正以外の小佐野一族を国際興業の株主から排除することを支援の絶対条件としている

・ 遺族は知らなかったようだが、実は政邦前社長が国際興業の債務に対して1317億円の包括根保証をしており、何ら対価のない100%減資に応じなければ、相続人たる政邦遺族は銀行からこの保証債務の責任を追及されることになる一方、隆正は一切個人保証を入れていない

・ 政邦遺族が100%減資に応じない場合、サーベラスとの合意書を締結することができず国際興業はすぐにも破綻し、政邦遺族は銀行や隆正を含む他の株主および国際興業から損害賠償請求を受けることになる(実際にはその脅迫の5日前にはサーベラスとの合意書を締結済で、破綻の可能性は完全になくなっていた)

・ サーベラスから政邦遺族はグループ会社を含め役員から完全に退任することが求められており、更にホテル・ゴルフ場などの利用も禁止されている(=出入禁止)

③ 政邦一族は隆正のこうした脅迫に屈し、何ら対価のない100%の減資に応じ、国際興業から完全に追放される

④ その後国際興業が新法人に切り替え、新KKとして出直す際に、隆正のみが僅か4500万円の出捐による再出資が許され、当初35%、後にオプションを行使して全株式の45%を取得する

⑤ さらに国際国業の経営再建が終わり、サーベラスが退出する際には同社が保有していた55%の株式(1400億円)を専ら国際興業の資金で自己株買い的に買い戻し、最終的には1000億円超の資産(新KKの株式)と、サーベラスがいた頃に漁夫の利的に受け取った227億円超の配当を独占することに成功
===================

このように隆正の行動が正当化されるかどうかは上記②で列記した、隆正から政邦一族への説明がウソであったか本当であったか、ということにかかっています。すでに「政邦一族が100%減資に応じないとサーベラスの支援を受けられず国際興業は破綻」、「政邦一族の1300億円強の個人保証云々」の話はウソ(むしろ逆に隆正が90億円超の個人保証を負っており、国際興業が破綻した場合は隆正こそが破滅する状況だった)であることが書証から確定しており、当日は原告、被告がそれぞれ証人を呼び、サーベラスやりそな銀行のスタンスに関する主張の真偽を争うこととなりました。

被告らの主張によると、メインバンクで全体の4分の3以上の債権額を有していたUFJグループではなく、全体の4分の1以下の債権額しかなかった非メインのりそな銀行がキャスティングボートを握っており、りそな銀行の支援の条件が上記の②〜④であり、隆正はその意向に従っただけというものでした。

りそな銀行公式サイトより:編集部

2.当日の裁判の様子

ようやく当日の裁判の様子に入るわけですが、当日まずはサーベラスの三浦証人の尋問から始まりました。三浦証人は終始一貫して「隆正の政邦一族への説明は事実無根」という証言をしており、例えば

・サーベラスはもともと第三者割当増資スキームを提案しており、原告ら既存株主が希薄化して残存するものだったが、隆正が最初から自分のみが株主になると主張していた

・100%減資して法人を切り替えるスキームを強く主張したのも隆正側だった。サーベラスとしても少数株主の整理ができるなど悪い話では無いから乗ったが、関係者の利害調整が難しいはずで、こうした主張を隆正がするのは奇異に感じた

・サーベラスとしては、隆正が自分でそう言うので、隆正を小佐野一族の代表としてみなしていた。小佐野一族内でどのように権益を配分するかどうかは小佐野家の相続の問題でサーベラスがあれこれ口出すことではなかった。(=隆正の政邦一族への説明は虚偽である)

・隆正は当初からサーベラスに対して「自分以外の小佐野一族には混乱するので一切会うな」と強く要求してきた

・国際興業は当時UFJ銀行のせいで突然資金の流動性に問題が生じただけで、2006年には19億ドルのノンリコースローンを調達できたハワイのホテル群、2007年に約860億円で売却した帝国ホテル株式、2013年に約800億円で売却した浜松町の土地など、莫大な潜在価値がある資産を有する会社で、サーベラスは当初決めたことを淡々と実施するだけで、それらの価値を実現でき、特にバリューアップしたわけではない

・りそな銀行に関しては、同行の債権も買えたら買いたいという程度であり、被告らの言うようなキャスティングボートを握っていたことなどあり得ない

といったことを述べていました。

この辺は従来からの政邦一族側の主張通りだったので予想通りといったところです。

他方、衝撃&笑劇の展開だったのは被告側証人の石村氏に対する尋問で、石村氏としては当初立場上被告側からの質問に対して「りそな銀行としては経営危機に至る経営責任を明らかにする観点から小佐野一族の100%減資を原則として求めた」「ただし隆正は求心力がある経営者ということで別扱いすることにした」ということを再三再四述べていました。

続いて政邦一族陣営側からの反対尋問は波乱の展開で、

冒頭石村氏が
「私と小佐野隆正氏との個人的付き合いはありません」
と証言した直後に原告側から証拠として隆正の娘の結婚式の座席表が提出され
「あなた隆正の娘の結婚式に出席していますよね」
と指摘され泡を食うところから始まりました。

その後も石村氏が

「少額ではありますが国際興業と現在私が社長を務める大栄不動産との間は取引があるもので、その仕事の関係で招かれたものです」
と説明したら今度は原告側から
「大栄不動産が国際興業に20億円の不動産取引を申し込んだ意向書がありますが、20億円は少額ですかね?」
「他にも浜松町の不動産やらホテルの開発計画なりで取引がありますよね?」

などと追及されあたふたするという展開で、思わず法廷内も失笑がこぼれるという事態になりました。この時点でもはや石村氏の主張を信じるに足ると判断する人はほとんどいなくなったのではないかと思いますが、その後も石村氏は

「りそな銀行としては隆正氏の経営者としての能力を評価して再任を認めたが、りそな銀行として隆正氏の経営能力を審査したことはない」

などというわけのわからない答弁を繰り返し、重要な論点になると「たぶんそうだと『思う』」「一般論としては〜だが、個別の判断は異なる」などと判然としない回答に終始し、ひたすら保身に走っていました。

そして、被告らの主張が成り立つには、そもそもりそな銀行によるサーベラスへの債権譲渡が国際興業の存続にあたって必須である必要があったにも関わらず、あっさりとUFJのみのサーベラスへの債権譲渡の可能性も認めてしまいました。

先に三浦氏が、圧倒的な債権額で、しかもとにかく一刻も早く債権譲渡を実現したがっていたUFJのみからの債権譲渡でも国際興業を支援していたことを明言していたなかで、これは被告の主張を根幹から崩す証言でした。更には、被告が再三主張していた「りそな銀行がキャスティングボートを握っていた」か、という質問に対し、明確にその事実を否定する回答をしました。

最後には裁判官からの補充尋問で、隆正のみに35%保有を決めた根拠を問い質されたところ何も答えられず、「言えないのですね」と裁判官から言われ、力なく「はい」と応じていました。挙句、最後の追い打ちともいえる隆正の経営能力についての裁判官からの補充尋問でも、そもそも何ら調査等しておらず、銀行の取締役会などに提出した資料も何も作成していないことを確認させられていました。

こんなズブズブな関係で腰が引けている人を第三者と装って証人として呼ばなければならないくらい隆正側は追い詰められているのでしょう。。。ってか証人になる予定の人を娘の結婚式に呼ぶってバカなのかな。。。。

3.今後の展開

ということで今回の証人尋問は反対尋問における石村氏の醜態が非常に印象深かったのですが、実はこれはあくまで前哨戦で、来週には小佐野隆正本人に対する本人尋問(被告側の主尋問40分、原告側からの反対尋問80分)が待ち受けています。このグダグダな状況で隆正が本当に法廷に出てくるのかは疑問なのですが、とりあえずは法廷ウォッチャーとして楽しみにしたいと思います。

これが終わればもう大きなイベントはなくなるので、さすがに2020年中には判決が出ることになるのでしょうが、個人的な印象ではもはや隆正の勝訴という線はなくなっており、賠償額の多寡に論点が移っていきそうな気がします。

ではでは今回はこの辺で。

宇佐美 典也   作家、エネルギーコンサルタント、アゴラ研究所フェロー
1981年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業後、経済産業省に入省。2012年9月に退職後は再生可能エネルギー分野や地域活性化分野のコンサルティングを展開する傍ら、執筆活動中。著書に『30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝えたいこと』(ダイヤモンド社)、』『逃げられない世代 ――日本型「先送り」システムの限界』 (新潮新書)など。

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宇佐美 典也
作家、エネルギーコンサルタント、アゴラ研究所フェロー

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