新型肺炎:潜伏期間が過ぎる「8日以後」要注意

長谷川 良

中国武漢で発生した新型コロナウイルス問題をフォローしていると、いろいろと勉強になる。一つはコロナウイルスに感染した場合、それが発病するまで一定の時間、医学用語では「潜伏期間」があることだ。日常会話では余り使用しない言葉だが、新型肺炎問題に関する記事には頻繁に出てくる。

もちろん、初めて聞いた言葉ではないが、新型コロナウイルス報道で出てくる「潜伏期間」という表現にはとても意味深いものを感じるのだ。

武漢市初の臨時医療施設(2020年2月5日、新華社公式サイトから)

海外中国メディア「大紀元」独語版を読んでいて「潜伏期間」が独語で Inkubationszeit というのを初めて知った。「大紀元」によると、新型コロナウイルスの場合、10日から最長15日の潜伏期間があるというから、2月8日以降、新型コロナウイルスの感染者が急増する可能性があるというわけだ。

なぜ「2月8日以降か」というと、武漢市当局が新型コロナウイルスの拡大防止のため空路と陸路を閉鎖、外部との接触を断ったのが「1月23日」だったからだ。その23日より前に武漢市から出て行った市民や訪問者の数は数百万人と推定されている。だから、武漢でウイルスに感染した人が他の町などに移動したり、滞在したとすれば、そのウイルスが発病するまでの時期(潜伏期間)になるのは遅くても「2月8日後」という計算になるわけだ。

実際、北京や上海などにもウイルス感染者が出て、北京では2人が新型ウイルスで死亡した。「大紀元」によれば、中国共産党幹部やその家族も感染し、特別病院に隔離され、通常の病院では手に入らない米国製の医薬品で治療を受けている。感染が確認され、病院に隔離された共産党幹部やその家族は少なくとも5人だという。例えば、中国国立厚生委員会の傘下にある日中友好病院には共産党幹部メンバーやその家族が治療を受けているという。

ちなみに、外部との交流、接触が遮断されている都市は武漢を含み36都市になる。多くの中国人はウイルスの潜伏期間が過ぎて発病するのではないか、といった不安と恐れを抱いて暮らしているという。

オーストリア国営放送の中国特派員が先日、北京から新型肺炎の状況を報告していた。「北京の市民はパニックに陥っているか」という質問に、同特派員は「市民がパニックに陥っているかどうか分からない。なぜなら、北京当局から外出を控えるように警告されているので、路上で市民に取材することができないからだ」と説明した。

同特派員によると、外国人特派員は事務所にも行けず、自宅でラジオやテレビ、ネットのニュースをチェックし、状況の掌握に努めているという。なお、同特派員の現地アシスタントは感染が怖くて、事務所に出てこなくなったというのだ。

以下は、「潜伏期間」という言葉から少々飛躍しているかもしれないが、当方が考えたことを綴る。

細菌は目に見えないから、ウイルスに感染したかどうかは発病しない限り断言できない。その期間、不安な日々を送る。幸い、新型コロナウイルスの潜伏期間は2週間前後だから短いほうだろう。潜伏期間がもっと長い病もあるからだ。

ハリウッドの女優アンジェリーナ・ジョリーさんは2013年、自分の家系は特殊な乳がんになる遺伝子を抱えていると考え、乳がんが発病する前に外科手術を受けたことを明らかにして大きな反響を呼んだ。彼女は近い将来、母親と同じように発病することを危惧して、その悪性遺伝の潜伏期間が過ぎて発病する前に手術を決断したわけだ。

人は年を取れば、事故を除けば、何らかの病気になり、闘病生活を送った後に亡くなる。人は生まれた以上、最後は死ぬわけだから、「体の中に潜伏する致死性の病を抱えながら生きている」ような存在ともいえるだろう。人は様々な潜伏期間の病、ウイルス、遺伝子を抱え、その潜伏期間が過ぎれば、発病し、人生を閉じることになる。

持病には長い潜伏期間もあるし、短い潜伏期間もある。その長短は病によって異なるだろう。「あの人は長生きした」と羨ましく思われたり、「彼は余りにも早く亡くなった」と惜しまれたりする。いずれにしても、新型肺炎のコロナウイルスが潜伏期間が過ぎた8日以後、中国全土に急速に拡大しないことを願う。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年2月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。