キヤノン「EOS R5」東京五輪前に発売へ:崖っぷちからの反転攻勢なるか?

長井 利尚

2020年2月19日、日刊工業新聞は、私が前回の記事で紹介した、キヤノンが開発中の新型フルサイズミラーレス一眼「EOS R5」の発売時期が、「早ければ東京五輪・パラリンピック前」になることを報じた。2月13日のキヤノンのリリースでは、キヤノンのフルサイズミラーレス一眼用の新たなRFレンズ9機種については「2020年中の発売を目指す」と発表されていたが、「EOS R5」の発売時期には、一切言及されていなかった。

キヤノン「EOS R5」(公式サイトより:編集部)

日刊工業新聞のこの記事によれば、キヤノンは「R5の投入で(2月14日に発売されたばかりの、一眼レフ旗艦機『EOS-1D X Mark III』の)サブ機の需要が獲得でき、(東京五輪・パラリンピックにおけるキヤノン製品の)使用率を上げられる」と考えているようだ。

キヤノンは、「EOS R5」と同時に開発発表されたRFレンズの一つ「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」も、東京五輪前に発売することを目指しているという。このレンズは、この記事で紹介した、ソニー「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」よりも、さらに小さい(ように見える)超望遠ズームレンズだ。ズームレンズながら、「エクステンダーRF1.4×」「エクステンダーRF2×」を装着することも可能であり、前者を装着した場合の焦点距離は140-700mm、後者を装着した場合の焦点距離は200-1000mmとなる。

キヤノン「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」(公式サイトより:編集部)

ソニー「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」(公式サイトより:編集部)

この記事で、私は「明るいレンズを持つ意味が、以前に比べて確実に薄れている」と書いた。このレンズのテレ側の開放F値は、ソニーの超望遠ズームレンズより暗い7.1であり、今の時代ならではの、携行性を重視したレンズだが、オートフォーカスの合焦精度や描写性能には、おそらく全く問題ないはずだ。

2019年のデジカメのメーカー別世界シェア(台数)は、ニコンが定席の2位から転落して3位となり、ソニーが2位に上昇した模様だ。キヤノンは、フルサイズよりひと回り小さいAPS-Cセンサーを採用したミラーレス一眼「EOS Mシリーズ」を2012年から展開しているので、ミラーレス一眼のシェア(BCN調査)は2019年も1位に踏み留まった。

3位に転落したニコンは、高級コンデジ市場からの撤退に続き、数年後には、一眼カメラ市場からも撤退に追い込まれる可能性が高まっていると私は考えている。なにしろ、2020年3月期のカメラ事業は、現在の事業区分になってから初の営業赤字に転落する見通しなのだ。

カメラ業界で、ソニーだけが生き残り、他社は全て撤退してしまうと、競争がなくなってしまい、消費者は不利益を被る。実機を操作してみないと何とも言えないが、「EOS R5」は、私がかなり久々に購入を検討しているキヤノンのカメラだ。キヤノンには、カメラ業界の健全な競争を維持するためにも、故・御手洗肇社長時代のチャレンジ精神を取り戻してほしい。