新型コロナウイルスとの長期戦にあたって心得るべき5つのこと(特別寄稿)

2020年02月27日 06:01

本稿の目的は、新型コロナウイルスに日本社会が立ち向かっていくための指針を考えることである。本稿は私の行政経験およびそれを通じて培った能力をベースに書かれた政策的意見にすぎず、個々人の新型コロナウイルスへの具体的な対処の在り方については感染症対策の専門家がまとめた政府の基本方針に従うべきである。

専門家会議で発言する安倍首相(官邸サイトより)

むしろ私としては「政府の基本方針になぜ従わなければならないか」という疑問に大局的知見から自分なりに答えるために本稿を作成したつもりである。

全体の構成としては冗長になるのを避けるため、先に結論を書き、その後に結論に至るまでの過程を補足的に説明することとしたので、その点ご理解されたい。それでは以下本題に入り、我々が新型コロナウイルスと戦うにあたって心得るべき事項を列挙する。

① 新型コロナウイルス対策は長期戦になる

言うまでもなく新型コロナウイルスは未知のウィルスであり、現時点で有効な治療法はなく、また類似のウィルスのように熱・湿気に弱いかどうかもわからない。今後世界的に研究が進められていくことになるが、すぐに有効な治療法が見つかる可能性は低く、また新型コロナウイルスがすぐに消滅することはないので、人類及び日本社会はコロナウイルスとの長期戦を戦っていかなければならなくなる。

② シミュレーションによると新型コロナウイルスに感染しても、実際の発症率は4~5%程度である

以下のリンク先はある著名な統計学者がダイアモンドプリンセス号の公開データから、新型コロナウイルスの発症率を統計的に解析したものである。

この分析はあくまで暫定的なものであるが、この分析によると概ね感染者の発症率は4.7%ということになり、逆に言えば感染しても95~96%程度は5日程度で自己治癒することになる。

なお武漢以外での新型コロナウイルス発症者の致死率は0.8%程度ということなので(後述するように武漢は明らかに医療機関の感染者の受入れ能力を超えている)発症者の重症化率は概ね20~25%程度と推測されるが、これは他の報道とも整合的である。

クルーズ船乗客らの医療施設搬送を支援した自衛隊(自衛隊ツイッター)

③ 感染症対策医療機関の新型コロナウイルスの発症者の受入れ能力は4300~4800床程度である

現在新型コロナウイルスは感染症法に基づく指定感染症に指定されており、発症した感染者が見つかった場合、感染症指定医療機関に隔離されることになる。この感染症指定医療機関のキャパシティ(病床数)は種別に、特定:10、第一種:103、第二種:1758、結核病床:3502、で合計5373床である。

さすがにこのすべてを新型コロナ対策にあてることはできないので、仮にこの病床の8~9割が新型コロナ向けに割り当てられるとすると4300~4800床程度が、我が国医療機関の新型コロナウイルスの発症者の受入れキャパシティということになる。

つまり入院が必要な発症者がこの数を長期的に超えると、日本の感染症対策の持続可能性に黄信号が灯り、中国のように社会を停止せざるを得なくなる可能性が高い。場合によっては(新型コロナウイルスが熱に弱くない場合)東京五輪もあきらめざるを得なくなるかもしれない。

④ ピーク時の感染者数が11万人を超えると、日本も社会が停止しかねない

③と②の結果から、専門医療機関の受け入れ能力を発症率で割り戻すと、4800床÷4.7%=10.2万人となる。つまりこの10.2万人が、静的に考えれば日本社会が通常モードで許容可能なコロナウイルスの感染者数となる。少々バッファーを見たとしても11万人程度だろう。

やや粗い議論だが、一般病棟の補佐により感染症病棟の病床の回転に決定的なボトルネックが生じないと考えれば、ピーク時の感染者数をこのライン以下に抑えることが、当面の日本社会としての防衛ラインになると言ってもいいと思う。

これは日本の全人口の0.1%程度ということになるが、武漢の新型コロナウイルスの罹患率は2%超とのことなので、これは完全にキャパオーバーで、現在中国があのように社会を停止させているのは理にかなったことである。

なお中国等でのデータが整理されれば患者数は発症者数から精度高く逆算できるようになるので、特に新型コロナウイルスへの感染が疑われる人すべてに検査する必要はないと思われる。

⑤ 結局我々にできることは政府の基本方針に従うことである

では④を踏まえて我々は何をすべきかというと、まずは感染の一時的な広がりをおさえるために数週間は活動を抑え気味にして人との接触をなるべく控え、手洗いを徹底し、体調が悪ければ5日程度は休む、それでも治らず症状があてはまるならば病院に行く、ということである。

つまるところ、政府の基本方針に従ってピーク時の感染者数を抑えることに協力するということである。

以上簡単に論考を重ねてきたが、最後に私見を述べると、日本社会はまさに新型コロナウイルスとの戦いの瀬戸際に立たされているように思う。このような認識の下、足下の現状を評価すると、いささか頼りないが政府はこの時点で最低限やるべきことをやり(国会は頼りにならなかったが)、アナウンスすべきことはしたのであり、それを受けてこの戦いを乗り越えらえるかどうかは結局は日本社会の構成員である我々一人一人の行動にかかっているということなのだろうと思う。

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宇佐美 典也
作家、エネルギーコンサルタント、アゴラ研究所フェロー

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