「Go Toトラベル」事業者への補償は何パーセントが適正か

2020年12月18日 06:01

junce/iStock

GoToトラベル(以下GoTo)の全国での一時停止が発表されました。

それに伴い、事業者への補償比率を35%から50%へ増額。この割合について、ワイドショーなどで話題になっています。

補償比率は何パーセントが適正なのか。原価計算の手法を用いて考察したいと思います。

何を補償すべきか

そもそも、政府は「何の費用」を補償すべきなのか。

GoToによって発生した売上(旅行予約)。その売上があると見込んで、発生してしまった費用。この費用を負担すべきではないでしょうか。売上に伴い発生する費用。「変動費」です。

GoToの対象事業者は主に2つ。宿泊事業者と旅行業者(旅行業者・旅行代理店)です(※1)。

宿泊事業者と旅行業者では、大きく利益構造が異なります。一律の比率で補償するのは、無理がありそうです。そこで、それぞれ分けて考えてみます。

宿泊事業者の利益構造

「中小企業実態基本調査(中小企業庁)」によると、宿泊事業者の売上原価率は約20%(※2)です。売上原価は、ほぼ変動費と考えて良いでしょう。

変動費の最も多くを占めるのが「商品仕入原価・材料費」です。これはわかりやすいですね。売上、つまりお客さんが来るのに伴って発生する「食事の材料費」。この材料費を「補償」すれば良い。よって、補償比率は、このまま「20% 程度」となります。

上述の通り、補償するのは、あくまでGoToが原因で発生したしまった費用のみです

Fidsey/iStock

GoToがあるから予約した。GoToが使えないから、キャンセルした。宿泊事業者は、お客さんが来ることを見込んで、食材を発注してしまっている。その「食材」費用を補填するわけです。

売上があろうがなかろうが発生する費用、つまり家賃や従業員の給与などの固定費は、GoToとは無関連なので度外視します。固定費の補填は、別途補助金等でカバーされることを前提とします。

旅行業者の利益構造

次に旅行業者の利益構造について考えます。

「小企業の経営指標調査(日本政策金融公庫)」によると、旅行業及び旅行代理業の売上高総利益率(粗利率)は約44%。ここは45%とします。補填すべきはコストなので、逆算します。

100%-45%=55%

補償比率は「55% 程度」となります。

旅行業者の変動費は、旅行の申し込みに伴い発生する「交通機関の運賃」や「宿泊先の費用」です。旅行業者は、ある意味「流通業」です。当然、仕入=変動費(率)は、宿泊事業者より大きくなります。伴い補償比率も大きくする必要があります。

何を優先すべきか

まとめると、宿泊事業者 20%、旅行業者 55%、となります。もちろん「理論値」です。それぞれの事業者の構成割合にもよりますが、今回提示されている「50%」という割合は、大きく的外れとは言えないと思います。もっとも、上限額が決まっているため、比率は大きな意味をなさないかもしれません。

上記試算では、変動費を用いました。変動費の多くは、「食材や交通機関の運賃など」とも述べました。これらは「外部」に実際に「支払わなければならない」費用です。

宿泊事業者が、食材などを仕入れてから、支払うまでの期間(支払勘定回転期間といいます)は、0.4ヶ月~1ヶ月程度(※3)。キャンセルした顧客向けの材料費を、早々に支払わなければなりません。資金ショートが迫っています。

優先すべきは、スピードであることは間違いないでしょう。

[ 備考・参考 ]
※1
事業者向け Go To トラベル事業公式サイト

※2
中小企業庁 中小企業実態基本調査

※3
日本政策金融公庫 小企業の経営指標調査(従業員21~49人)

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