「記者クラブ開放」の約束は嘘なのか - 池田信夫

2009年09月16日 21:14


このビデオでも報告されている通り、きょうの鳩山首相の記者会見について、鳩山氏は事前にフリージャーナリスト上杉隆氏に対して、次のように答えています:

私が政権を取って官邸に入った場合、上杉さんにもオープンでございますので、どうぞお入りいただきたいと。自由に、いろいろと記者クラブ制度のなかではご批判があるかもしれませんが、これは小沢代表が残してくれた、そんな風にも思っておりまして、私としては当然、ここはどんな方にも入っていただく、公平性を掲げて行く必要がある。

ところが今日の会見は「内閣記者会との協議」によって開放は拒否され、海外メディアと雑誌社が数社、参加しただけでした。


上のビデオに登場した「ビデオニュース・ドットコム」の他、インターネット報道協会も内閣記者会(官邸クラブ)と首相官邸、民主党に会見出席要望書を送ったが、回答はなかったとのことです。内閣記者会(官邸クラブ)の幹事社である共同通信社は、J-CASTニュースの取材に対して、次のようにコメントしています:

民主党の方からはインターネットメディアに関する要望はありませんでした。首相会見に記者クラブ以外の媒体社が出席できるようにするには、規約を変えなくてはなりません。今回は特例としますが、引き続き協議を続けていく予定です。

この回答はおかしい。記者会見を行なうのは首相官邸であり、内閣記者会はそこに家賃も電気代も払わないで居候しているだけで、何の権利もない団体です。本来は記者会見に誰を入れるのかを決めるのは官邸であり、クラブと「協議」する必要はなく、ましてクラブが拒否する権利もない。「規約を変えなくては」云々に至っては笑止千万です。居候の規約に何の拘束力があるのか。

深刻なのは、この閉め出しを決めたのがクラブだけではなく、官邸の意向でもあるらしいということです。『週刊朝日』編集長の山口一臣氏によれば、大手紙の経営者が「新聞、テレビなどのメディアを敵に回すと政権が長く持ちませんよ」などといって民主党を脅し、平野博文官房長官は周辺の記者に「記者クラブ開放は俺がつぶす」と言っていたそうです。これが事実だとすれば、首相の約束を官房長官が破ったことになります。

記者クラブは、韓国が盧武鉉政権時代に廃止した今、世界中で日本にしか残っていない奇習です。「スペースがない」などというのは理由にならない。新しい官邸の会見場は広く、クラブ加盟社はカメラマンや助手を入れると1社5人以上も会見場に入っており、しかも9割以上の記者は何も質問しない。内閣記者会を解散し、普通の国のように政府がチェックして記者証を発行した記者はすべて参加できるようにすべきです。

これはメディアだけの問題ではありません。こんな簡単な改革もできない政府が、数兆円の無駄使いを官僚の抵抗を排して削減できるとはとても思えない。このままずるずると既得権との妥協を重ねると、ネット世代を味方につけて改革を実行するオバマ政権とは逆に、これまで民主党を応援してきたウェブメディアも離れるでしょう。

追記:情報が錯綜しており、混乱の原因は民主党が情報管理を内閣広報室に丸投げしたことにあるようです。ニューズウィークに17日の段階の情報をまとめました。

池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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