過剰規制が産業空洞化を生み出す - 池田信夫

2009年11月18日 08:51

10月26日、医薬品・健康食品大手「ケンコーコム」が、シンガポールに子会社をつくった。このウェブサイトは、日本語で書かれていることでもわかるように、海外向けに薬を売るサイトではなく日本人向けだ。それをわざわざシンガポールにつくったのは、6月に施行された改正薬事法で、胃腸薬「ガスター10」、発毛剤「リアップ」などが、通信販売が禁止の「第1類医薬品」に分類されたためだ。


シンガポールの子会社は日本の薬事法の規制を受けないので、第1類の薬を売っても違法にはならない。消費者が買うのは個人輸入という扱いになるので、薬事法では規制できない。もちろん運賃はかかるが、消費税がかからないので、8000円以上買えば送料(650円)は無料になる。

ケンコーコムは、もともと海外展開する計画もあったというが、最大の要因が薬事法の規制にあることは明らかだ。同社は薬事法改正が憲法違反だとする訴訟を起こしており、このように海外から販売することによって薬事法の不当性を印象づける戦術でもある。

私の知人に、ある投資ファンドのファンドマネジャーがいるが、彼も村上ファンドの事件で「日本では投資ファンド自体が犯罪とみられることがわかった」といって、シンガポールに移住した。また派遣労働や請負労働への規制が強化されたため、工場やコールセンターなどの施設をシンガポールや中国などにつくる動きも広がっている。

90年代以降の日本の長期不況の一つの原因はもちろん不良債権処理の失敗だが、もう一つはグローバル化による中国など新興国との競争に敗れたことにある。その結果、産業の収縮や雇用の喪失が起きているのだが、政府はそれに気づかず、問題を単なる「デフレ」と認識して景気対策で乗り切ろうとしている。他方で「安心・安全」の名のもとに官僚が責任を逃れるための過剰規制が強まり、さらに産業を萎縮させている。今度の薬事法改正は、こうした「官製不況」の象徴である。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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