SIMロックより周波数が問題だ - 池田信夫

2010年04月03日 10:23

総務省は、SIMロックの解除を携帯キャリア各社に要請しました。4年前のブログ記事にも書いたように、私は基本的にSIMロックには反対であり、それを解除した業者を逮捕した警察を批判しました。結果的に、この業者は略式起訴になり、その後は同様の事件は起こっていません。本来は欧州のように、最初から相互運用性に配慮した設計が行なわれるべきだった。


しかし残念ながら現在では、松本さん夏野さんの指摘するように、SIMカードだけ取り替えても他のキャリアの端末が使えるようになるとは限りません。ドコモとソフトバンクの使う周波数が違い、SIMロックを前提にして端末が設計されているからです。ユーザーが望めば、それを解除するのはいいとしても、現状ではそれによって利便性が上がることも競争が促進されることもほとんど期待できない。次世代(LTE)では、こうした互換性に配慮して端末を設計すべきだと思います。

それよりはるかに大きな問題は、夏野さんも指摘するように、周波数です。私のブログにも書いたように、いま総務省は次世代携帯に、世界のどこの国とも互換性のない「ガラパゴス周波数」を割り当てようとしています。このままでは、SIMカードをどうしようと、日本の端末はどこにも輸出できず、海外の端末は日本で使えない。

これは日本の通信産業にとって深刻な問題です。次世代ではハードウェアもソフトウェアも複雑化するため、通信サービスも端末もグローバル化し、世界で数社しか生き残れなくなるかもしれない。今のままでは、日本のキャリアもベンダーもその中に入れる見通しはありません。検索エンジンのように、海外のシステムを「日本化」するのがせいぜいでしょう。今後の最大の成長産業である通信サービスの世界から日本が落伍することは、日本経済にとっても深刻な問題です。

しかも日本の周波数を国際標準に合わせるのは、技術的にはむずかしい問題ではない。700MHzについては、テレビ局がマラソン中継にしか使っていない770~806MHzを返還させて携帯に使えば、アジア諸国と同じように700MHz帯で上り/下りが使えるようになります。900MHz帯についても、夏野さんの指摘のように防災無線やパーソナル無線を動かせば、900MHzで上り/下りが使えるようになります。

それができないのは、電波部がテレビ局や業務用無線の既得権を無条件に認めたまま、割り当てを決めようとしているからです。こんなことをしていては、今後500MHzの周波数を開放すると表明しているアメリカとの格差は開くばかりです。

政府は「成長戦略」を描いていますが、何が成長産業かを政府が予測することなんかできない。できないことを語るより、政府のすべきことをやるべきです。周波数などのインフラの開放は政府にしかできないし、今やらないと2011年の周波数変更というチャンスを逃し、日本の無線通信産業は壊滅するおそれが強い。

この問題については、いろいろな意見があると思うので、投稿を募集します。システム管理者までどうぞ。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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