6月30日に発表された5月の米個人消費支出(PCE)コアデフレータは、前年比プラス1.4%と5月のブラス1.5%から縮小した。これによる米債への影響は限られた。FRBのイエレン議長がここにきての物価の低迷は一時的との発言も影響していたためとみられる。
FRBの物価目標(正確には目安か)は、市場が注目しているPCEの食料とエネルギーを除いたコアデフレータではなく、総合指数の方である。ただし、こちらも5月分は前年比プラス1.4%となっていた。今年に入ってからの総合とコアのPCEデータは下記の通り(1月から5月分)。
PCE 1.9 2.1 1.8 1.7 1.4
PCE, excluding food and energy 1.8 1.8 1.6 1.5 1.4
米商務省が発表している個人所得(Personal income)、個人消費支出(Personal consumption expenditures)、PCEデフレータ(Personal Consumption Expenditure Deflator)についてもう少し説明を加えてみたい。
これは米国の個人の所得と消費について調査した指標であるが、このうち個人所得とは、社会保険料を控除し実際に個人が受け取った所得のこととなる。この個人所得は消費動向を決定付ける大きな要因ともみられている。賃金給与・賃貸・利子配当等といった所得の構成項目や、可処分所得・貯蓄率なども同時に発表される。
個人消費支出(PCE)とは1か月間に実際に米国の個人が消費支出した金額について集計したものであり、米国のGDPの7割を占める個人消費の動向は米経済にも大きな影響を与えることで注目されている。特に名目個人消費支出の前月比などが注目される。
名目個人消費支出(名目PCE)を実質個人消費支出(実質PCE)で割ったものが、個人消費支出(PCE)物価指数もしくはPCEデフレータと呼ばれるものであり、これも同時に発表される。PCEデフレータ変化率がプラスであれば物価上昇、マイナスであれば物価下落と捉える。
特に価格変動が激しいエネルギーと食品を除いたものを「コアPCEデフレータ」と呼び、FRBが物価指標の中で最も重要視している指標のひとつとなっている。その理由としては消費者物価指数に比べて、バイアスが生じにくいためといわれている。 FRBはコアPCEでみた物価見通しも公表している。
実は日銀の物価目標も当初は消費者物価指数の総合の前年比での2%であったが、展望レポートでの予測は消費者物価指数(除く生鮮)、つまり日本版コア指数で行っていた。2016年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定、物価目標を総合からコアに置き換えて統一させている。
ということで今後のPCEデフレータがイエレン議長の言うように一時的なものなのかによっては今後の利上げスケジュールに影響を与える可能性もある。ただし、その数値が常に2%を超えていなければ利上げは無理というのではなく、2%近くにいれば利上げの支障とはならないとみられる。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年7月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。