国債の流動性がここにきてさらに落ち込んでいる。7月28日の債券先物の日中値幅(ナイトセッションを除く)はわずか4銭しかなかった。10年国債のカレント物と呼ばれる直近発行された銘柄が一日の動きがひとつのレートもしくは、0.005%の動きに止まることが普通になってきてしまった。金利が凍結しつつある。
この要因としては日銀の金融政策にある。日銀による長短金利操作は、本来であれば市場によって形成される長期金利を日銀が金融政策によって操作しようとするものである。
足元金利をマイナスに低下させた上に、長期国債を大量に日銀が購入することよって確かに長期金利のコントロールは可能であるように見えた。現実に日銀は市場に国債買入額の増減、さらには指し値オペという強力な手段によって長期金利を一定レンジに押さえ込もうとしている。
7月はじめにECBの緩和バイアス解除を意識し、欧米の長期金利がやや動意を示した。この海外での金利上昇を受けて7月7日の日本の10年債利回りは0.105%に上昇した。今年2月3日に日銀は指し値オペを実施したが、その水準が10年債利回りの0.110%となっており、その水準に接近した。
7月7日に日銀は5年超10年以下の国債買入額をそれまでの4500億円から5000億円に増額した。同時に固定利回り方式での残存期間5年超10年以下の国債買入もオファーした。「指し値オペ」である。10年利付国債347回の買入利回りは0.110%となった。日銀としては0.110%が絶対防衛ラインということをあらためて示した。これにより日銀の長期金利の誘導目標値はマイナス0.1%からプラス0.1%であろうことが再確認された。
しかし、ここにきて日本の消費者物価指数も前年比でプラス0.4%あたりとなっていることや、欧米の中央銀行の正常化に向けた動きによって長期金利は低下しづらくなっている。このため、それ以降の日本の長期金利が0.050%から0.100%の間での降着相場となってしまった。
欧米の長期金利は物価の上昇圧力の鈍さもあり、思ったほどの上昇とはなっていない。これもあり、日本の長期金利もこの水準で均衡が保たれることになった。しかし、このような環境がこの先、永遠に続くわけではない。
この均衡が崩れた際、特に金利上昇圧力が掛かった際に、日銀はどのような対処をするのか。指し値オペを何度も使うようなことも考えづらい。さらに債券市場は流動性が低下している分、大きな衝撃に対しての抵抗力が失われているようにも見える。債券市場ではこのような潜在リスクが次第次第に増加しつつある。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年8月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。