見た目がいい資料?工夫次第ではこのように変えられる

尾藤 克之

写真左が西脇氏(エバンジェリストスクール!/TOKYO FM)HPより。

指示命令を目的とする「業務指示書」、決裁を求める「稟議書」、報告を目的とする「報告書」、提案を目的とする「企画書」。私たちが日々の業務で必要とする資料は思いのほか多い。そして、資料には「見やすさ」「伝わりやすさ」が求められてくる。「見やすい資料」「伝わりやすい資料」とは、いったいどのようなものか。

今回は、『実例で見る! ストレスゼロの超速資料作成術』(あさ出版)を紹介したい。著者は、日本マイクロソフトの業務執行役員/エバンジェリストとして活動する西脇資哲(以下、西脇氏)。自身が手がける「エバンジェリストスクール!」(TOKYO FM)では、乃木坂46の若月佑美とともにリスナーに様々な話題を提供している。

時間を上手にコントロールする

今回は、西脇氏ならではの意識しているポイントを聞いた。

「講演やプレゼンなどで、大事なことを話す際、私は意識的に、『問』を空けるように意識しています。また、資料の説明をしていて、自分の言葉が本当に伝わっているのか不安になるときも、やはり『間』を取ります。これは、相手に考える時間を与え、私が話していることを想像してもらうためです。」(西脇氏)

「話しの流れに『間』があれば、相手は言葉を自分のこととして受け止め、考えることができます。時間は『2秒』くらいがちょうどいいでしょう。相手に受け止めてもらうため、判断を委ねるために、意識的に間を取ってください。」(同)

また、西脇氏は、「絶対時間」ではなく「相対時間」を使うことの重要性を次のように述べている。この説明はわかりやすい。

「ここで、読者の皆さまに質問をしたいと思います。時間の伝え方についてですが、次ぎのような方法で申し込みを受け付けた場合、どちらが多くなると思いますか?。」(西脇氏)

<質問1>
A.この用紙にご記入のうえ、3月15日の17時までにご返送ください。
B.この用紙にご記入のうえ、3月15日までにご返送ください。
C.この用紙にご記入のうえ、2週間以内にご返送ください。
※答えは最後に記載。

「新幹線に乗っていたときに、このことに気がつきました。少し前までは、『ただいま、12時20分に、この列車は、三河安城駅を通過いたしました。12時27分に名古屋駅に到着いたします。どなた様もお支度をお急ぎください』という放送が流れていました。ところが先日、従来とは異なるアナウンスを耳にしました。」(西脇氏)

「『ただいま、定刻通りに三河安城駅を通過しました。あと、7分で名古屋駅に到着します』というアナウンスでした。このほうが、『あ、そろそろ準備しなくちゃ!』と思わすことができます。相対時間の表現はその気になるのです。」(同)

逆に、絶対時間を使用したほうがわかりやすい場面はあるのだろうか。

「資料については絶対時間で書かなくてはいけません。相手がいつ、その資料を見るのかわからないからです。ここで事例を紹介したいと思います。『2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて』ではなく、『3年後のオリンピック・パラリンピックに向けて』のほうが、気持ちが高まるような気がしませんか。」(西脇氏)

言葉の流れやリマインドの効果

「ここでまた、読者の皆さまに質問があります。手元に2つの資料があります。それを説明するとき、次ぎのどちらがいいと思いますか?。」(西脇氏)

<質問2>
A.資料1は交通事故の統計です。資料2は交通事故の主な原因を表したものです。こういう原因で事故が起きていて、上位にはこういう事故が多いんですね。
B.資料1は交通事故の統計です。日本ではこういう事故が多いんですね。では、この事故がどういう原因で起きているか、それをまとめたのが資料2になります。
※答えは最後に記載。

「次ぎに『リマインド』効果を説明しましょう。上司に稟議書を書いてきた社員がいたとします。『こちらを承認いただきたく資料を持ってきました』とA社員。そしてひと通り説明が終わったあとに、『こちらを承認いただきたく、お願い申し上げます!』とひと言。何も言わなかった場合よりも好結果が期待できます。」(西脇氏)

「話は聞いていない場合があります。そこで、もう一度念押しをするのです。手間も時間もかかりませんから、決め台詞として覚えておいてください。」(同)

本書は非常に上手くまとまっている。注文をつけるとしたら「資料はアピールし過ぎないほうがいい」の箇所のみ状況によって異なるという点くらいか。西脇氏のようにオラクルやマイクロソフトという有名企業の冠があるなら謙虚にまとめたほうがスマートであることは間違いない。しかし中小零細企業では、そうは言っていられない。

プレゼンテーションには相手にプレゼントを渡すという意味もあると考えている。資料は相手に渡った時点でその後はどうなるかわからない。1人歩きをすれば、勝手な評価をされてしまう。誰の目に留まっても印象に残るように、プレゼントを渡すかのように仕上げるのも一考ではないかと思う。※本記事用に本書一部を引用し編纂した。

参考書籍
実例で見る! ストレスゼロの超速資料作成術』(あさ出版)

<質問1の答え>
正解はC。A.B.は絶対時間、C.は相対時間で締切を告知している。申し込むという行動を起こすには、相対時間のほうが人に訴えかけるものがある。

<質問2の答え>
正解はB。同じ説明でも、Bのほうが話の流れが途切れないので、聞いていてスムーズに感じる。資料から次の資料へ流れを途切れさせないので理解しやすい。

コラムニスト
尾藤克之

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