昨今、リアル書店が激減しています。書店のない自治体が2割に上ったと報道されました。原因としては、以下のような事情が考えられます。
ネットをはじめ、動画や音楽配信等で余暇時間の争奪戦が激化し、書籍に時間を割くことのできる人が少なくなったこと。
雑誌的記事がネットで読むことができるため、雑誌が売れなくなった。また、雑誌はコンビニでも買うことができる。
ネット書店で購入すればリアル書店に足を運ばなくても済むし、ネット書店の方が品揃えが豊富。
私たち大人は、書籍を読まずにネットを見る、ネット書店で欲しい本を買う…等々の「選択の自由」があります。
しかし、子供たち、とりわけ幼児から小学生くらいまでの子供たちにとってリアル書店の激減は、書籍に触れる機会という「選択肢が奪われる」という深刻な事態を招く怖れがあります。
昨今の公立図書館は高齢者の利用者が多く、子供用の書籍があっても落ち着いて読むことはできません。幼児用のスペースを設けている図書館もありますが、どちらかと言うと「遊ぶスペース」になっているように感じます。
私は、娘が幼稚園児の頃から頻繁に書店に連れていきました。書店にある絵本をすべて読破したり、その後、たくさんの物語本等をねだられるようになったことは以前の記事で書きました。
もし、幼少期から書店に行く機会がなければ、娘が書籍に親しむことはなかったと思います。
当然、小中高の間に活字を読む機会は激減していたことでしょう。そういう意味では、親として書店には大いに感謝しています。
「活字なんて読まなくてもいい」という意見もあるでしょう。
しかし、絵や画像のない活字やラジオが脳に与える効果は看過できないほど大きいのです。頭の中で、物語の主人公の表情やそれぞれの場面を想像することが”脳力”を大きく活性化させるということは、従来から何人もの医学者や脳科学者が主張しています。
マンガや動画は決して悪くありませんし、私も大好きです。
しかし、活字や音声情報のない世界は(少なくとも私には)想像することができません。ネット上に溢れている断片的な活字情報しか得られないと思うと、正直ゾッとします。
幼い子供たちと書籍とのファーストコンタクトの場としての書店の存否が、新たな都市と地方の格差になるのではないかと懸念しています。
マクロレベルの対策としては、①書籍の消費税を免除する。②子育て家庭に図書券を配布する。③リアル書店の固定資産税等を減免する。などが考えられます。子育て支援の一環として十分実現可能な政策です。
そして、何よりも大切なことは、私たち大人世代がリアル書店を出来る限り利用するということでしょう。
次世代を担う子供たちへの間接的な支援として、リアル書店に足を運んで書籍を購入する人が一人でも増えて欲しいと心から願っています。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年8月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。