テキサス州を直撃した“ハービー”、米経済への影響は?

テキサス州ヒューストンを中心に直撃した、熱帯暴風雨(一時はカテゴリー2のハリケーン)“ハービー”。

トランプ政権は27日に緊急会議を招集し、ホワイトハウスのホームページで写真を公開していました。

キャンプ・デービッドにいたトランプ米大統領とホワイトハウスのシチュエーション・ルームをつないだビデオ会議では、主に以下の面々がそろっていました。29日からテキサス州を視察するトランプ米大統領は、メラニア夫人を随行させるようです。

マイク・ペンス副大統領
ジョン・ケリー首席補佐官
トーマス・ボサト国土安全保障・テロ対策・サイバーセキュリティー担当首席顧問
スティーブン・ムニューシン財務長官
キース・ケロッグ国家安全保障会議(NSC)首席補佐官
ライアン・ジンク内務長官
トム・プライス厚生長官
リック・ペリー エネルギ長官
アレックス・アコスタ労働長官
キルステン・ニールセン副首席補佐官
ホープ・ヒックス広報部長代行
サラ・ハッカビー・サンダース報道官
ウィリアム・B・ブロック・ロング連邦緊急事態管理庁(FEMA)長官

キャンプ・デービッドでのトランプ米大統領、「USA」と書いた帽子を着用。
cd

ホワイトハウスでの対応する政権メンバー。
WH
(出所:White House

米経済への影響を探ってみましょう。

2016年時点でテキサス州の人口は2,790万人と全米2位、そのうち深刻な被害が報告されているヒューストン都市圏(正確にはヒューストン・ザ・ウッドランズ・シュガーランド)は650万人です。テキサス州の州経済規模は1兆6,830億ドルでカリフォルニア州に次いで全米2位ヒューストン都市圏は2015年時点で5,033億ドルと4位となっています。

州別の経済規模ランキング、全米でのシェア(ワシントンD.C.含む、2017年1~3月期)

1位 カリフォルニア州 2兆6,701億ドル 14.1%
2位 テキサス州 1兆6,830億ドル 8.9%
3位 ニューヨーク州 1兆5,010億ドル 7.9%
4位 フロリダ州 9,560億ドル 5.1%
5位 イリノイ州 8,040億ドル     4.3%
※”カトリーナ”に直撃されたミシシッピ州は1,090億ドルで37位

都市圏の経済規模ランキング(2015年)

1位 ニューヨーク・ニューアーク・ジャージーシティ(NY、NJ、ペンシルベニア) 1兆5,370億ドル 8.8%
2位 ロサンゼルス・ロングビーチ・アナハイム(カリフォルニア) 9,310億ドル、5.1%
3位 シカゴ・ネイパービル・エルジン(イリノイ、インディアナ、ウィスコンシン 6,410億ドル 3.5%
4位 ヒューストン・ザ・ウッドランズ・シュガーランド(テキサス) 5,030億ドル 2.8%
5位 ダラス・フォートワース・アーリントン(ワシントンD.C.、バージニア、メリーランド、ウェストバージニア) 4,910億ドル 2.7%
※ニューオーリンズ・メテリー都市圏は780億ドルで43位。

こうした事実を踏まえ、ハリケーンが直撃した当時のGDP伸び率を振り返っていきましょう。

2004年、カテゴリー3の“チャーリー”がフロリダ州を直撃した当時の実質成長率は3.8%増(熱帯暴風雨“ボニー”通過から22時間後、1日で2つの熱帯低気圧上陸は全米初)でした。カテゴリー3の“ウィルマ”が8月、カテゴリー4の“カトリーナ”が10月に南部を襲った2005年は3.3%増、カテゴリー1、熱帯暴風雨のサンディ”がニューヨーク市など北東部を10月末にヒットした2012年は2.2%増となっています。各地での被害は目を覆うばかりでしたが、ハリケーンや熱帯防風による米経済への影響は比較的限定的と言えそうです。

gdp

gdp2
(作成:My Big Apple NY)

四半期ベースも然りで、“ウィルマ”と“カトリーナ”に相次いで上陸された2005年は7~9月期に前期比年率3.8%増、同年10~12月期に3.3%増と3%成長を達成。当時はITバブル崩壊後の低金利で住宅市場を中心に景気回復途上にあり、米経済全体への爪痕はそこまで深くはなかったとみられます。欧州債務危機の余波に加え2012年末で切れるブッシュ減税を受けた財政緊縮懸念いわゆる財政の崖をにらみ”サンディ”が直撃した2012年10~12月期は同0.1%増だったものの、2013年1~3月期には無事妥結して同2.8%増へ回復していました。

小売売上高でみても、ハリケーン絡みで変動が激しくなったものの、買い替え需要に支えられ落ち込んだ後は持ち直しを確認しています。JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは、「我が社の保険関連調査部門は“ハービー”による経済損失を100億~200億ドルと試算、規模としてはトップ10に入る」と指摘。ただし「“カトリーナ”の1,590億ドルを大きく下回り、“ハービー”の損失額はGDPの0.1%ポイント程度」と分析することも忘れません。その上で下半期の成長率予想を7~9月期は2.25%増、10~12月期は1.8%増で維持していました。

katrina1 katrina
(作成:My Big Apple NY)

米新規失業保険申請件数や小売売上高、鉱工業生産などで一時的に振れが激しくなる可能性があるでしょう。しかし、“ハービー”が米経済を大幅に減速させるリスクは低いと考えられます。

(カバー写真:euronews/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年8月29日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。