7月15日(火)20時-21時の「言論アリーナ」で「年金財政検証」が放送される予定である。司会はアゴラ研究所所長の池田信夫氏、ゲストは経済産業研究所上席研究員の中田大悟氏と私だ。
現行の年金財政が破綻状態にある可能性が高いことは、様々な有識者が指摘しているが、政治に危機感が伝わらない。例えば、財政検証の問題点については、以前のコラム「年金・財政検証、3つの死角」でも取り上げ、そこでは「増税の限界による国庫負担の限界」「所得代替率が招く誤解」「受益と負担の不透明性(世代間公平)」の問題を説明した。
また、本日(7月10日)のダイヤモンドオンラインでは、早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問の野口悠紀雄氏が、「2040年「超高齢化日本」への提言」という連載コラムで、「現実的な仮定では、厚生年金積立金は2033年にゼロとなる」可能性を説明している。
しかし、このような指摘が多く出ているが、それでも危機感はなかなか伝わらない。その理由は、年金財政の破綻を隠蔽するために設定している「高過ぎる運用利回り」を巡る専門的な議論が分かり難いことも関係しているように思われる。むしろ、本日(7月10日)の日経ビジネスオンラインのコラム「2014年・財政検証から透けて見える「厚労省の本音」」に掲載した以下の図表(積立金の予想と実績)を眺める方が、一目瞭然かもしれない。
詳細はコラムをご覧頂きたいが、黒色の実線は「厚生年金の積立金の実績(簿価ベース)」を、青色の実線はその時価ベースの実績を表す。これらの動きは、2004年・財政検証(緑色の点線)や2009年・財政検証(青色の点線)が予想した経路とは明らかに異なる。
図表の通り、2004年・財政検証は、厚生年金の積立金(緑色の点線)は2050年度に約335兆円まで増加すると予想していた。さらに2009年・財政検証(青色の点線)は約508兆円まで増加すると見ていた。
そして、実際の積立金(黒色の実線)は既に減少傾向にあるが、例えば、2014年・財政検証で低成長を前提とするケースG(実質成長率が2024年度以降 マイマス0.2%)の積立金の推移においても、今の足元の積立金の減少傾向と比較すると楽観的で、積立金は2050年度で約260兆円まで増加すると予想しているのである。
このような話を含め、7月15日(火)20時-21時の「言論アリーナ」では財政検証の問題点を説明する予定であるので、関心がある方はぜひご覧頂きたい。
(法政大学経済学部准教授 小黒一正)