小池百合子希望の党代表の経済ブレーン安東泰志氏(東京都顧問)が記事『希望の党・経済ブレーンが初めて明かす「ユリノミクス 本当の狙い」』を発表した。僕は内部留保課税という公約に対する疑問を二つの記事『企業会計原則を理解しない希望の党』『内部留保を誤解する希望の党』に書いたので、安東氏がどう説明しているか興味を持って読んでみた。
記事で、安東氏は内部留保課税に問題があることを素直に認めていた。彼は「企業の内部留保に課税すると、法人税との2重課税になってしまう」「内部留保にまで課税しようとするならば、日本への投資はさらに敬遠されてしまうでしょう」という。それなら内部留保課税を引っ込めればよいのだが、次の段落に驚くべきことが書かれていた。引用する。
とはいえ、小池さんはそんな単純にこの内部留保課税を考えているわけではありません。課税すると見せかけて、給与の増額や株主への還元に資金を使うように促すのです。さらにここにもう一手加われば、内部留保課税は実に有効な経済政策となるでしょう。
上の段落で安東氏は内部留保課税が「見せかけ」だと明言しているが、この発言は選挙に悪い影響を与えるだろう。希望の党の公約である憲法改正は「見せかけ」かもしれない。原発ゼロは「見せかけ」かもしれない。こうして国民の間に疑心暗鬼が広がっていく。そして、民進党の受け入れについて門戸を開くと「見せかけ」て実際には「選別」した先日の出来事を国民は思い出すわけだ。安東氏の発言は、公約だけでなく、党への信頼も損ねる危険をはらんでいる。
それでも首尾よく政権を取ったとしよう。そのころには企業も内部留保課税は「見せかけ」だ知ってしまっているので、「給与の増額や株主への還元に資金を使う」はずはない。これでは政権獲得後の経済政策が期待通りには動かない。
安東氏は小池代表の経済ブレーンだそうだが、こんな記事を書くようではブレーンの役割は果たしていない。希望の党に悪影響を与えるばかりだ。