イングランド銀行による利上げの可能性が高まる

英国政府統計局(ONS)が25日発表した英国の7~9月の国内総生産(GDP)速報値は前期比0.4%増となり、市場予想を上回った。

英国の中央銀行であるイングランド銀行は9月14日の金融政策委員会(MPC)で、政策金利を過去最低の0.25%で据え置くことを決めた。7対2の賛成多数での決定となり、マカファティー氏とソーンダース氏が前回会合に続き、0.25ポイントの利上げを主張した。この会合からホッグ委員の後任のラムズデン委員が加わり3月以降で初めて、フルメンバーとなる9人での採決となった。

市場では9月のMPCで利上げ主張派がひとり増えて6対3とすることで将来の利上げの可能性を示唆するのではとの観測も出ていた。しかしそうはならなかった。そのような回りくどいやり方ではなく、同時に発表したMPCの議事要旨で「経済が継続的な緩みの縮小や基調インフレ圧力の段階的な上昇の見通しと一致する経路をたどるなら、今後数か月(over the coming months)での一定の金融刺激策縮小は適切となる可能性があると、過半数の委員は判断した」と年内の利上げの可能性を示唆していた。

カーニー総裁もあらためて、向こう数か月で緩和縮小が必要になるかもしれないと自らも判断していると会見で発言しており、イングランド銀行は早ければ次回11月のMPCで利上げに踏み切る可能性を強く示唆した格好となった。

次回のMPCは来週の11月2日に開催される。今回のGDP統計はイングランド銀行による11月のMPCで経済動向を確認するための最後の主要経済指標となる。それが市場予想を上回ったことにより、11月のMPCでの利上げ観測がさらに高まった。

英政府統計局が10月17日に発表した9月の消費者物価指数は前年同月3.0%増となっており、2012年4月以来、約5年半ぶりに上昇率が3%台に乗せていた。これも利上げを後押しする材料となる。

イングランド銀行のカンリフ副総裁は23日に11月のMPCで利上げを支持するかどうかについて、あらためて疑念を表明していた。このため、カンリフ副総裁が利上げに反対票を投じる可能性がある。日銀の金融政策決定会合では執行部と呼ばれる総裁と2人の副総裁の票が割れることは皆無ではないが、通常は考えづらい。これに対してイングランド銀行は総裁自身が少数派に回ることがあるなど、個人の意見が重視される。このため副総裁が反対したとしてもそれが多数派になるとは限らない。

市場では11月2日のMPCで0.25ポイントの利上げを約80%程度織り込んでいるとされる。もし利上げが決定されるとなれば、10年ぶりとなる。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年10月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。