政治の世界は「frienemy」で溢れている --- 並木 まき

アゴラ

ここ数年、“フレネミー”という言葉をよく耳にするようになったが、これは“friend(友達)”と“enemy(敵)”を組み合わせた造語である。

つまり、親しげなフリをして近づいてくる敵を指す言葉だ。


筆者は28歳から市議会議員を務めてきたが、実はこの世界は文字通りの“フレネミー”が、ウヨウヨしている世界である。

とくに市議会議員の場合には、選挙の際には同じ選挙区内で“椅子取りゲーム”をするかのように議席を奪い合うことになるので、当然ながら足の引っ張り合いもあるし、信頼出来る議員仲間をつくるだけでも容易ではなかったりする。

一般的にフレネミーの特徴としてよく挙げられる点がいくつかあるが、筆者からしてみれば、これらはまさに政治の世界でよく見かける風景だったりするのだ。

例えば、自分の意見に対して相手が残酷な発言や批判的な意見を言ってくることはフレネミーの特徴の1つだが、こんなのは日常茶飯事。

そもそも主義や主張の異なる人たちが議論をする場なので、相手の意見をただただ“潰そう”と、言い掛かりや揚げ足取りのようなやり方でかかってくる人もいる。

また、あなたが何かをしようとする際にいちいち邪魔してくるのもフレネミーの特徴だが、これも「あの人の実績だけは、作らせたくない!」という本心からか、政治の世界ではよくあること。そして、競争ばかりしかけてくるのもフレネミーの特徴といわれるが、政治の世界はもともと競争色が強く、自分よりも誰かが優位に立つことを極端に嫌う人も多い。

さらに、自分のことしか考えず行動に移すような自己チューな点も、フレネミーの特徴として頻繁に挙げられるが、そもそも政治家は、ある意味自己チューでなければ務まらない。

筆者は今春の統一地方選には出馬せず、政治の世界からの引退をすでに表明したが、今の時期はまさに統一地方選挙目前で、選挙に出る政治家にとっては、“フレネミー祭り”ともいえるシーズンかもしれない。

とくに同一選挙区内でのネガティブキャンペーンはすさまじいものもあり、特定の候補者に対して意図的なネガティブキャンペーンが起きやすい時期だ。

ついこの前までは親しげな様子だった◯◯議員と△△議員が、その人のいない場所では平気で互いに悪口を言っている……なんてことも往々にしてあるのが、現実なのだ。

都市部の統一地方選はとかく投票率が低く、国政選挙に比較し浮動票が少ない現実からも、“選挙に行く習慣がある有権者”の奪い合いになっている傾向も否めない。

そんな背景があることからも、同一選挙区内の議員同士は残念なことに「frienemy」にならざるをえないともいえるのだろうか。

有権者の方々には、これから統一地方選までの間に度々起きるであろう候補者同士の足の引っ張り合いに惑わされることなく、冷静に信頼出来る候補者を見抜き、票を投じるよう、目を光らせていただきたいと思う。

並木 まき

市川市議会議員
ブログ