最近、某社の株主から、「インフルエンザ完治から48時間以内は株主総会への出席はできない。企業のコンプライアンスのためだ」とを会社側から告げられたということを耳にした。
ご承知のように、株主には「自益権」と「共益権」がある。
「自益権」とは配当等の利益を受けることで、「共益権」とは会社運営に参加することだ。
株主総会は、個々の株主が「共益権」という極めて重大な権利を行使する最も重要な機会だ。
それを、インフルエンザ罹患者で伝染の危険性が極めて高い者であればともかく(それでも会社側はあくまで「お願い」しかできず、完全な出席拒否はできないと考える)、すでに完治して医師の証明書を持参した株主の出席を拒絶するというには、特殊株主(俗に「総会屋」と呼ばれる)が闊歩した野蛮な前時代を彷彿させる出来事だ。
これは小規模な同族閉鎖会社のことではなく、一般個人株主が100人以上もいるれっきとした株式会社のことだというから、私は耳を疑った。
コーポレート・ガバナンス・コードが策定され、株主重視の経営が推進されているかに見える今日、このような事態が現に存在するとしたら、日本企業のガバナンスとコンプライアンスはいまだ「名ばかり」に過ぎない。
あくまで伝聞で確証はないが、これが事実なら日本企業が未だ旧態然たる状況から脱却できていないのではないかと、私は深く失望を覚えた。
企業経営者諸氏に申しあげたい。
株式持ち合い等で経営陣が会社の実権を持っていた時代は終わった。
企業の所有者である株主を疎かにすることは断じて許されない行為である。
本稿をお読みの経営者各位はこのことを肝に銘じて、緊張感を持って企業経営に臨んでいただきたい。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年2月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。