米国で失われつつある中所得者層、州別動向の共通点とは

米経済が3%成長を2期連続で達成したせいか、昨今の米国で「格差社会」という言葉はそれほど聞かれなくなった気がします。

格差拡大の証左としてかつて持て囃された存在こそ、中所得者層です。ピュー・リサーチが紹介した通り、トランプ大統領が選出される前、2015年の中所得層の世帯数は全体で50%と、1971年の61%から低下していましたよね。

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(作成:My Big Apple via Pew Research)

ピュー・リサーチでは所得者層別の人口で割合を示しましたが、こちらのデータでは所得そのものに占める各階層のシェアで中所得者層を切り取っています。中所得者層が全米所得に占める割合は2016年に14.3%となり、2007年の14.7%から低下していました。逆に上位5分の1が占める割合は51.6%と、2007年の50.3%から上昇しています。では、全米50州で最も中所得者層が失われている州はどこなのでしょうか?気になるワースト10は、以下の通り。

10位 アリゾナ州
中所得者層の所得シェア;15.1%(2007年)>14.6%(2016年)
高所得社層の所得シェア;48.7%(2007年)<50.6%(2016年)
低所得者層の所得シェア:3.8%(2007年)>3.2%(2016年)

9位 カリフォルニア州
中所得者層の所得シェア;14.6%(2007年)>14.1%(2016年)
高所得社層の所得シェア;50.5%(2007年)<52.2%(2016年)
低所得者層の所得シェア:3.4%(2007年)>3.0%(2016年)

8位 アイオワ州
中所得者層の所得シェア;15.9%(2007年)>15.3%(2016年)
高所得社層の所得シェア;46.6%(2007年)<48.2%(2016年)
低所得者層の所得シェア:4.1%(2007年)>3.8%(2016年)

7位 ロードアイランド州
中所得者層の所得シェア;15.4%(2007年)>14.8%(2016年)
高所得社層の所得シェア;48.7%(2007年)<50.5%(2016年)
低所得者層の所得シェア:3.2%(2007年)>2.9%(2016年)

6位 オハイオ州
中所得者層の所得シェア;15.4%(2007年)=15.4%(2016年)
高所得社層の所得シェア;48.4%(2007年)<50.2%(2016年)
低所得者層の所得シェア:3.5%(2007年)>3.3%(2016年)

5位 インディアナ州
中所得者層の所得シェア;15.8%(2007年)>15.1%(2016年)
高所得社層の所得シェア;46.8%(2007年)<48.9%(2016年)
低所得者層の所得シェア:4.0%(2007年)>3.6%(2016年)

4位 ミシガン州
中所得者層の所得シェア;15.3%(2007年)>14.6%(2016年)
高所得社層の所得シェア;48.4%(2007年)<50.4%(2016年)
低所得者層の所得シェア:3.6%(2007年)>3.3%(2016年)

3位 ウィスコンシン州
中所得者層の所得シェア;15.9%(2007年)>15.2%(2016年)
高所得社層の所得シェア;46.8%(2007年)<48.7%(2016年)
低所得者層の所得シェア:4.1%(2007年)>3.7%(2016年)

2位 ルイジアナ州
中所得者層の所得シェア;14.5%(2007年)>13.8%(2016年)
高所得社層の所得シェア;50.7%(2007年)<52.8%(2016年)
低所得者層の所得シェア:3.0%(2007年)>2.8%(2016年)

1位 モンタナ州
中所得者層の所得シェア;15.5%(2007年)>14.5%(2016年)
高所得社層の所得シェア;48.0%(2007年)<50.4%(2016年)
低所得者層の所得シェア:3.8%(2007年)>3.6%(2016年)

ワースト10にランクインした州をご覧になって、共通点に気づいたあなたは米国通に違いありません。そう、これらのワースト10のうち、カリフォルニア州とロードアイランド州以外、2016年大統領選でトランプ氏を選出した州が8つ並んでいるのですよ。ラストベルトなどで知られる中所得者層の地盤沈下が、トランプ氏というunpresidentedならぬunprecedentedな大統領を招いたことがあらためて浮き彫りとなりました。

トランプ大統領の支持率が40%割れで底堅さを示すように、支持者がトランプ氏に忠実であることも特徴的です。フロリダ州の南部の高校で発生した銃乱射事件の対応でも明白で、トランプ大統領が提示した教員の銃携帯で乱射を抑止する考えに、ある米国人男性は「少なくともアイデアを提供し、人々に議論する材料を与えている」と評価していました。この男性はアフガニスタンに従軍した元陸軍兵士ですから、トランプ大統領の国防重視の姿勢に共鳴する部分が多いのでしょう。同時にフランス生まれの移民でイスラム教徒だったとは、全くもって想定していませんでしたが。

(カバー写真:Scott Maentz/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年2月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。