証人喚問生中継の持つ意味:私の経験から

早川 忠孝

ライブドアニュース(2016年1月)より引用:編集部

かつて耐震偽装事件でヒューザーの小嶋氏の証人喚問を行ったことがある。

与党側の質問は、結構難しい。
野党側は、事実の解明よりも、マスコミが予め作り上げたストーリーに基づいて証人を徹底的に締め上げることに重点を置くようになってしまうが、ある程度事前に調査を遂げ、かなり真相に近いところまで迫っていると、マスコミの作り上げたストーリーに乗ることはどうしても躊躇するようになる。

テレビを見ている一般の国民の方々にはどうも自民党の質疑者はツッコミが足りないなどと不評だったようだが、何が何でもヒューザーの小嶋氏を耐震偽装事件の主犯にしたい野党やマスコミの方々と私の立場は異なっていた。

ただただ真実を知りたい、そういう思いで証人が答え難い質問をどんどん繰り出した。
案の定、小嶋証人は付添人の弁護士の助言を受けながら、殆どすべての質問に対し、刑事訴追のおそれがあるので、という答えを繰り返し、答弁を拒絶した。

私の質問は、耐震偽装の事実を知ったのはいつか。
耐震偽装の事実を知りながら、藤沢のマンションの販売を継続したのではないか、という一点である。

いわゆる瑕疵ある物件を、瑕疵があることを知りながら売却してしまったという詐欺事件の追及をしたのが私の質問の趣旨で、姉歯一級建築士の耐震偽装をヒューザーの小嶋氏が支持して実行させた、というマスコミや野党の方々の見立てと私の問題意識は違っていた。

マスコミは、どうしても政官財が共謀して耐震偽装を行った、という絵を作りたくなる。
野党の皆さんも然り。
しかし、自民党のプロジェクトチームで事件の真相の解明を進めていくと、どうもそこまで大掛かりな事件ではない、ということが見えてくる。

マスコミは自民党を代表して小嶋氏の証人喚問に立った私の質疑に注目していたが、私はあくまで私の見立てに従って淡々と質問を続けた。
案の定、何の答えも得られない。

もっと変化球を投げ、視聴者が喜ぶような見せ場を作ればよかったのかな、と思わないでもないが、弁護士出身の自民党の国会議員の質問としてはあれが限度だった。

佐川氏の証人喚問が27日に予定されており、衆議院では弁護士出身の柴山昌彦氏が質問に立たれるはずだ。
佐川氏を徹底的に追い詰めるような質問が次々に繰り出されるはずだが、佐川氏がそれにどう答えるかは分からない。

与党の質問は、結構難しい。
多分核心的な部分についての答えは得られないはずである。

NHKが予算員会の証人喚問を生中継することになったようだ。
ヒューザーの小嶋氏の証人喚問よりも、今回の佐川氏の証人喚問は国民の関心を引くはずである。

佐川氏が何も言わなくても、大方の国民は、この一連の事件にはもっと深い謎があると思うはずである。

佐川氏の証人喚問で終わり、ということにはとてもならない。
今回の決裁済み文書の改竄事件は、ヒューザーの小嶋氏の詐欺事件よりも遥かに根が深く、行政や国会の在り方の根幹を揺るがすような重大事件である。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年3月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。