米大学で「孔子学院」閉鎖の動き

長谷川 良

海外中国メディア「大紀元」日本語版(4月11日付)によれば、米国で学生数が2番目に多いテキサス州のA&M大学内にあった中国情報機関とつながる「孔子学院」の閉鎖が決まった。

▲ウィ―ン大学内のキャンパスにある「孔子学院」(2013年9月21日、ウィーン大内で撮影)

▲ウィ―ン大学内のキャンパスにある「孔子学院」(2013年9月21日、ウィーン大内で撮影)

この対応は、テキサス州選出のヘンリー・クーラー議員(共和党)とマイケル・マッカール議員(民主党)が4月5日、同州の学校4校に書簡を送り、その中で「孔子学院は中国側のスパイ工作組織であり、米国の安全保障を脅かしている」、「孔子学院は米国の教育機関の監視外にあって、中国の意向に沿った政治をプロパガンダしている」と警告。それを受け、テキサスA&M大学のジョン・シャープ学長は、「学内の2キャンパスにある孔子学院を閉鎖することを決めた」というのだ。

A&M大学の「孔子学院」閉鎖は初めてのケースではない。カナダのマクマスター大学の「孔子学院」が2013年7月末、閉鎖に追い込まれている。2014年には米シカゴ大学の100人以上の教職員が同校にある中国教育機関「孔子学院」が中国の情報機関的役割を果たしている、としてその閉鎖を求める署名を同大学に提出したことがあった。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のクリストファー・ヒュース教授は、「孔子学院は中国当局の宣伝機関だ」と断言、欧州知識人の間では「孔子学院」の拡大に懸念の声が高まってきている。カナダ安全情報局は孔子学院の活動に警戒を呼び掛けているほどだ。

米国では約100の大学に「孔子学院」がある。米連邦議会上院の情報委員会の公聴会で2月13日、クリストファー・ライFBI長官が、スパイ活動の疑いで孔子学院を捜査していると述べている。

「孔子学院」について昨年調査報告を発表した全米学識者協会のディレクター、レイチェル・ピーターソン氏によると、「孔子学院」の教材には、中国共産党が敏感話題と位置付ける事件や事案について取り上げない。1989年の学生運動の弾圧「六四天安門事件」や、迫害政策に置かれる法輪功などは明記がない。また、台湾や香港の主権的問題やチベット、新疆ウイグル地域における抑圧についても、共産党政権の政策を正当化する記述となっている。

「孔子学院」の閉鎖運動はテキサス州だけではない。大紀元によれば、フロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員(共和党)は同月、州内にある孔子学院を設置する4つの大学と1つの高校に、「反米の外国勢力」である「孔子学院」の排除を呼びかける書簡を送っている。
ボストン・グローブ紙によると、マサチューセッツ州選出のセス・モールトン下院議員(民主党)は3月、同州の40あまりの大学に書簡を送り、「孔子学院」の閉鎖や新規開校を認めないように求めたといった具合だ。

当方が「孔子学院」の存在を初めて知ったのは2013年頃だ。ウィーン大学のキャンパスには「孔子学院」と書いた看板がある。当時は「孔子学院」について知っている学生や教授は少なかった。あれから5年が経過する。「孔子学院」の正体が次第に暴露されつつあることは朗報だ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年4月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。