財務省は5月11日に2018年3月末現在の「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」を公表した。これによると内国債と借入金、政府短期証券を合わせた政府の債務(借金)は、合計で1087兆8130億円となった。
ちなみに内国債というのは国内で発行された国債のことであるが、現在、日本政府は海外で日本国債は発行しておらず、発行される国債はすべて内国債となる。ただし、期間が1年以下の短期債については、政府短期証券として別にカウントしている。
内訳としては内国債が959兆1413億円、借入金が54兆228億円、政府短期証券が74兆6489億円となっている。借入金を除いても1000兆円を超えている。
この数字は2017年12月末と比べ2兆593億円増えていることで、過去最高を更新している。
これだけ巨額の債務を抱えてはいるが、国債への信認が維持されていれば今後の債務維持は可能となる。しかし、現在の国債を巡る構図としては、日銀が物価を上げるためとして国債を大量に買い入れ、さらにはイールドカーブコントロールという政策まで取り入れて無理矢理、長期金利つまり国債の利回りを押し下げている。
長期金利の水準は、理論的には市場参加者の将来の実質経済成長率の予測、物価上昇率の予測、政府債務に対するリスクプレミアムの三要素で決まるとされている。あくまで理論的には、ということであり、市場参加者が適切な経済成長率や物価の予測を行えるかどうかとの疑問もある。しかし、少なくとも2017年度のGDPや足元の物価水準からみても、長期金利のゼロ%近傍が適正水準とは思えない。さらに政府債務に対するリスクプレミアムについても完全に無視されている格好となっている。
国債の利回りは各国の「経済の体温計」にたとえられるが、これは国の債務アラートの役割ともなっているはずである。これが日銀によってコントロールされてしまうということは、まだ市場はそれほどの警戒レベルに達していないとの見方もできる。しかし、無理矢理に日銀によって封じ込まれているとの見方もできなくはない。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年5月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。