こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。
東京都が提出した受動喫煙防止条例案が、東京都議会の厚生委員会で都民ファーストの会と公明党、共産党が賛成し、賛成多数で可決。受動喫煙対策に関する国の法案より厳しい内容で、27日の都議会の本会議で可決・成立する見通し。https://t.co/0CcFK3bYo2
— NHK@首都圏 (@nhk_shutoken) 2018年6月25日
昨日は厚生委員会にて知事提出の受動喫煙防止条例が採決され、委員会日程が重複していなかった私も傍聴席で参加。
代表質問など本会議での議論は低調に終わったものの、委員会では参考人質疑が行われ、最終的には自民党・共産党からそれぞれ修正案が提出される活発な展開となりました。
自民党・共産党から提出された修正案の概要は以下の通り。
【自民党案】
・知事提案の「従業員の有無」による判断基準を、「曖昧で実効性がない」として全否定
・国の法案に準拠し、客席面積100平米以下かつ全従業員の同意がある場合等を例外とする(いわゆる骨抜き)
・屋外への喫煙スペース設置禁止を、病院や児童福祉施設にも拡大する(これは◎)
【共産党案】
・都が緩和した加熱式タバコに関する例外規定を除外し、規制対象とする
・条例施行後に行う内容の見直しを5年以内→2年以内と前倒しにする
・屋外への喫煙スペース設置禁止を、病院や児童福祉施設にも拡大する(自民党案と同様)
共産党の修正案は、加熱式タバコの規制など私が従前から主張している通りの内容で、知事提案が後退してしまって生じた「弱点」を補う極めて前向きな内容です。
【参考】
都議会開幕。受動喫煙防止条例の弱点「加熱式タバコ(電子タバコ)」に、議会は修正を加えられるのか
一方の自民党案は国の法案同様、大幅に規制基準を緩和し例外店舗を激増させるものであり、これは業界団体に配慮するあまり受動喫煙対策に後ろ向きな内容と捉えられても仕方ないものと言えるでしょう。
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議員が条例案・修正案を出したときは、提出会派の議員に対して他会派の議員が質問するという「議員間討議」が行われます。
これまでの都議会では共産党などが議員提出条例案を出しても、他会派は質疑を行わず「黙殺」し、そのまま粛々と否決されるというのが慣例でしたが、今回は自民党・共産党に対して都民ファーストの会・公明党から活発な質問が飛び交いました。
※厚生委員会に議席があるのは都民ファースト・公明党・自民党・共産党の4会派のみ
自民党案に対しては、「一定の面積以下+全従業員の同意」で対象外とする点について、都民ファ・岡本都議が厳しく追及。
・経営者と雇用者という力関係から、同意への圧力を排除できないのではないか
・一旦同意したとしても、後に同意が取り消される場合の法的な手続きはどうなるのか
などを質し、自民党は明確な解決策を示せていなかったように思いました。また、
「従業員はすぐに変わって流動的。保健所がチェックすることはできず実効性がない」
「面積を基準にしていればわかりやすく、しっかりと実効性を担保できる」
との自民党案の主張についても、
・面積の基準が「客席」であり、それは保健所も把握していない
・店側がレイアウトを変更すれば、保健所もそれを逐一チェックすることは困難
・ゆえに「従業員の有無より、面積基準のほうが明確で実効性が高い」という主張はあたらない
として、理路整然と退けていました。
そもそも自民党案は、多くの店舗が対象外となる「100平米」という国基準に準拠した時点で後ろ向きな印象が否めず、これが
「知事提案の『人基準』は曖昧。さりとて国の規制は緩すぎる。よって都議会自民党は、例外基準を30平米とする修正案を提出する!」
みたいな内容で提出していれば、また違った展開・議論があったのではないかと残念に感じるところです。
一方の共産党案に対しては都民ファーストの会は、事実関係や法律についていくつか質問した後、「趣旨については理解する」という発言がありました。
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最終的な採決では、修正案はそれぞれ提出会派のみ賛成で否決。知事提出の原案は都民ファースト・公明党・共産党の賛成により、賛成多数で可決されました(自民党のみ反対)。
修正案を提出した共産党も、知事提案を「一歩前進」として評価し、賛成に回ったようです。
都民ファーストの会は共産党案を評価しながらも、
「国の法案との整合性・現場の混乱を最小限にすることを重視し、横出し・上乗せに抑制的である知事提案の方を支持する(要旨)」
という理由で否決し、知事提案を「理想的な最終型とは思っていない」「早期の見直しを求める」というこれまでにない強い意見を述べながらも、結果としては知事提出案を追認した形で終わりました。
今回の受動喫煙防止条例を巡って、参考人招致や修正案の提出、議員間討議が活発に行われたことは、「あたらしい議会」の息吹を感じさせる前向きなものであったと思います。
また弁護士時代からこの受動喫煙問題に真摯に取り組み、委員会でも文字通り八面六臂の活躍をみせ、理路整然と議論を展開していた都民ファ・岡本都議には心から敬意を表します。
一方で、最終的にはいわゆる「知事与党」が知事提出案を追認する形で終わり、議会側が政策立案能力を示して「知事提案を修正する」という結果までは出すことができませんでした。
政治的な事情があるのでしょうが(というかそれしかないのでしょうが)、本来は共産党案の「趣旨は理解する」としている最大会派・都民ファーストの会こそが、この内容の修正案を主導して可決するべきだっただけに、最終的な結果は個人的に残念です。
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とはいえ、国よりは遥かに厳しい基準となる条例が東京都で事実上可決されたことは、今後の展開に大きな意味を持つと思います。
ここまでの委員会質疑には少数会派ゆえ参加することが叶いませんでしたが、明日の本会議では我々もしっかりと意見を述べ、本条例案が実効性を持って速やかに実施され、また将来的には加熱式タバコの規制などが行われるよう要望していきます。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は東京都議会議員、音喜多駿氏(北区選出、かがやけ Tokyo)のブログ2018年6月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。