ハザードマップという言葉はよく目にするし、耳にすることも多い。
しかし、実際にハザードマップを見たことがある人はどれだけいるだろうか。
もちろん、ハザードマップで自然災害のリスクが予測され、それを認識していたとしても、災害発生そのものを抑制することはできない。しかし、大事なのは「減災」という考え方だ。
官民あげてハザードマップの周知・利活用を促し、ソフト・ハード両面にその備えをすることで、ほんの僅かでも災害の軽減につながるなら、それだけでハザードマップは意味を持つものになる。
1994年に建設省(現国土交通省)の通達により作成が始まったハザードマップだが、以前は紙情報(紙のマップ)で配布されていた為、その保管方法や配布方法がしばしば問題とされていた。
その後、ハザードマップはかなりの進化を遂げ、現在は国土交通省のサイトや各自治体のサイトなどで、かなり詳細な情報が「いつでも」入手、確認できるようになっている。※現在でも紙マップの入手も可能
洪水、土砂災害、津波等のリスク情報や道路防災情報などが気軽に調べられるので、現在の住まい、生活地域にどのような災害リスクがあるのか一度確認しておくべきだろう。
ここで、宮城県気仙沼市の例を紹介したい。気仙沼市では津波、洪水、土砂災害などの防災マップとともに「東北地方太平洋沖地震津波浸水図」を公開している。
気仙沼市サイトより:編集部
これは、東日本大震災津波による浸水範囲を調査し記録した「東日本大震災津波詳細地図」(※原口強・岩松暉 著:古今書院、2011年10月)から、気仙沼市に関わる部分を抜き出して作成されたものだ。
気仙沼市役所のホームページには、この地図の意義について以下の様な詳細説明文が添えられている。
正確な科学的事実を残すことこそ、後世の減災につながるものと考え、この詳細地図を作成しました。津波を生き抜いた人々は世代を超えて東日本大津波の事実を受け継いでいく必要があります。
※出所 気仙沼市役所ホームページ「気仙沼市防災マップについて」東北地方太平洋沖地震津波詳細説明文より一部抜粋
その地域や土地が過去に経験した自然災害の正確な記録と記憶は、後の減災につながるものになるのは間違いない。その記録と記憶は「まさか」がありえる証左そのものだからだ。
ハザードマップは災害リスクや被害想定を基に作られる。そこに過去の履歴を加えることが可能ならハザードマップが持つ意義はさらに高まるのではないだろうか。
ハザードマップのさらなる進化に期待したいが、そのせっかくの進化を享受するためには、自治体等による周知の徹底はもちろん、それを日頃から積極的に利用していくという「利用者側の意識変化」が重要であることも忘れてはならない。