この先ビットコインはどうなるのか?

有地 浩

ビットコインの価格は、本年6月下旬には60万円台の半ばまで下げたが、アメリカのSECがビットコインETFの上場を認可することへの期待感から7月に入って回復がみられ、一時は90万円の大台に乗せた。しかし、7月26日にSECがこの認可申請を却下したことをきっかけに反落して、足下では再び80万円を割り込む水準となっている。

昨年12月に200万円を超えるレベルまで上昇したのが夢のようだが、ビットコインはこの先どうなるのであろうか?

そもそもビットコインについては、多くの欠陥ないし技術的限界が指摘されている。取引のデータを格納する1ブロックの大きさが1メガバイトしかない上に、ブロックの形成に約10分かかるなど、決済手段として使用するには処理能力があまりにも小さくかつ遅すぎると言われている。

また、ブロックを作る際のマイニングと呼ばれる作業に大量の電力が消費されるため、単純にエコでないということのほかに、仮にビットコインが法定通貨にとって代わるほど広く使用される状況になると、世界の電力供給がひっ迫してしまうという問題もある。さらに、ビットコイン・ホエールズ(ビットコインのクジラ)と呼ばれる少数のビットコイン大口保有者が価格操作をする余地があることも、以前から指摘されている。

このほかにも、ある一定以上(通常は51%と言われているが、これ以下でも可能という研究結果もある)のマイニングのシェアを握る者が出現したら、その者はビットコインのシステムを乗っ取ることが可能となるという危険性もある。

しかも、このように、数々の欠点が指摘されているにもかかわらず、ビットコインのシステムが非中央集権的であるが故に、欠点克服のための関係者のコンセンサス形成が容易でなく、欠点がいつまでたっても改善しないことも問題である。

このため、最近ビットコイン価格が下落する中で、ビットコインの将来を悲観する向きも多くなってきている。
しかし、確かにビットコインの価格は昨年12月の史上最高値から大きく反落したが、このいわばバブル的な部分を除いて、少し長いスパンで見ると、ビットコインの価格は着実に右肩上がりで推移している。また、仮想通貨全体の中で見ても、ビットコインのドミナンス(全体の時価総額の中のビットコインの時価総額の割合)はイーサリアムやリップルといった他のメジャーな仮想通貨を抑えて、依然として40%台の後半にある。

これはどうしてだろうか。その大きな要因の一つは、ビットコインがいわば法定通貨の世界における米ドルのように、仮想通貨の世界の基軸通貨となっているからである。日本では取引所で円で直接アルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)を買うことができるが、多くの外国の取引所ではアルトコインはビットコインで買うことになっており、ビットコインの相場もドル建てではなく、ビットコイン建てで表記されるのが一般的だ。したがって、アルトコインを買う際にはビットコインをまず買うということが必要なのである。

もう一つの大きな要因は、ビットコインの流動性が大きいことである。アルトコインの中には取引量が少なく、いざ売買しようとしても自分の希望する値段でなかなか取引が成立しないこともあるが、ビットコインはたいていの取引所で扱われているため、幅広く取引参加者を集めることができる。このためビットコインはいつでも取引が成立するという安心感がある。

また、アルトコインの中にはボラティリティー(価格の変動)が極めて大きいものがあるが、ハイリスク・ハイリターンを求める投機家は別として、これでは普通の投資家は引いてしまう。ビットコインの価格の変動は依然としてかなり大きいものの、以前よりは落ち着いてきている。また、ビットコインであれば急な価格の下落に備えて先物を売っておくこともできる。

こうしたいくつかの要因があるため、少なくとも当分の間ビットコインは仮想通貨の世界で存在感を示し続けるであろう。いわば腐っても鯛、腐ってもビットコインである。