社会変革の方法論

目的は社会課題を解決すること。社会課題とは、理不尽なルールを見直す事。新しい道筋を示す事。世の中が便利で公平になる事。その方法論として政治家になる事を選び、今から35年前、大学生は、秘書見習いとして政治の世界に飛び込んだ。

大学生の所属する立教大学野田一夫ゼミは「現代産業企業論」、ニュービジネスの育成を学ぶ場であった。今でこそスタートアップ施策は充実し、企業支援拠点が多数生まれ、投資家(当時はエンジェルと言っていた)が若手起業家に投資をする状況になっているが、当時はその環境下にない。大学の外を見ても、今でこそ当たり前なNGO、NPOといった仕組みも確立されておらず、社会起業家という概念もなかった。

社会課題を解決する方法論として、新たなビジネスモデルを提供するような起業家になる、非営利で課題解決に取り組むNGO・NPOの理事長になる、利益を求めることを主としない社会起業家になる、といった選択肢がバブル全盛期の昭和時代末期には存在していなかった。

「地盤・看板・鞄」、ビジネス的に言うなら「市場・信用・資金」、政治的に言うなら「票田・知名度・政治資金」、何も持っていない大学生の卒業後の選択は、それでも政治家の道しかなかった、とも言える。

大学3年時の選択から、政治の世界で33年生きて、そして大学の客員教授となった今だから、言えることがある。社会課題を解決するための方法論として、政治家になるなら、何が何でも選挙に強くならないとダメだという事です。選挙に強ければ、政党や理不尽な要求に屈する必要がないから。政党を除名されても勝ち上がる力があれば除名されることはまずない。他党に議席を譲ることをわざわざしない。政党や既存団体、有権者の理不尽な要求を排しても、選挙に勝つことがわかっている政治家に反旗をひるがえせない。後のしっぺ返しが心配だから。

一方で、選挙の手法には正解は無い。何の選挙に、どの政党で、どの選挙区で立候補するのか、によって変わるから。ただ「地盤・看板・鞄」が無いと選挙の手法が異常者の行動になってしまう。異常な行動・活動しないと当選ができない、となると有権者との距離が遠くなり、普通の心を失ってしまう。

今、僕が大学3年生だったら、社会課題を解決する方法論として政治家を選んだかどうかわからない。起業家という道、NPO・NGOという道も選択肢の1つと捉え、インターンなどを行いながら、大学時代にビジネスを実践しながら、道を定めたと思う。2段階方式で、まず起業家となり「看板・鞄」を手に入れて、第2段階で政治家になるという道を定めたかもしれない。

少なくとも、子供の運動会や新婚旅行も関係ない365日24時間体制。家族や友人との時間を犠牲にして、全てを政治活動に突っ込む、そうしなければ選挙に勝てない。こんな政治の道を目指すことは無かったと思う。

政治家になることが目的でれば、手法は関係ないし、僕がアドバイスする必要もない。ただ社会課題を解決する方法論として政治家を目指したいという人には、先ずその人の状況下において、他の方法論との比較を勧めている。それでも、政治の道を選択するのなら、選挙の手法についても異常者の選挙とならないように、何の選挙に、どの選挙区で、どんなやり方で出馬したいのか、しっかりと見極める事を勧めている。

有権者が、政治に対して関心を失い、あきらめ感が漂っていることと、選挙の手法、方法論が、一般常識からズレている事はリンクしていると思う。皆が公平に幸せに暮らすことが出来る社会をつくるための方法論は複数あった方が良い。

社会変革の方法論として、政治家にこだわる必要はない。しかし、選択肢の1つであって欲しい。


編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2019年2月1日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。